たまプラーザでの仕事を終え、タクシーに乗り込む。
本社の青山一丁目へ向かって走り出す。
ため息を1つつき、iPodの電源を入れた。
普段は車通勤なこともあり、iPodを聞く機会はあまりない。
充電が1しかない。
まだ額には汗が滲んでいる。
車を部下に貸している為、久しぶりのタクシー移動で少し疲れた。
最近寝不足のせいかな
そんなことを考えつつ、ウトウトし始める。
朦朧とし始める意識の中に響く曲は、去年よく聴いた曲だ。
複雑な気持ちになる。
久しぶりに思い出される
君の笑顔。
君と出会ったのも、2年前の今日みたいな暑い日だった。
ショップ店員だった君。
5こ下だった君。
人見知りな君。
クールな顔立ちだけど、笑うとエクボが出来る君。
話す時には必ずじっとこちらを見つめてくる君。
見て見て!!が口癖だった君。
ドラえもんを見て泣いちゃう涙腺の弱い君。
感情の起伏が激しい君。
冬でもキンキンに冷えた飲み物しか飲まない君。
怒ることを知らない傷つきやすい君。
必ず俺の半歩後ろを歩きたがる君。
俺より二時間先に起きて朝ご飯を準備する君。
先に好きになったのは俺。
告白したのも俺。
別れを告げたのも俺だった。
若かったのかもしれない。
健気で純粋な君の笑顔が、大好きだったはずなのに
気付くとそれを重く感じていた。
君に会うのが憂鬱になっていった。
理由なんか何でも良かったんだ。
君が悪いわけじゃない。
俺が未熟だったんだ。
別れを告げた日
君の顔を見れず俺は背を向けて淡々としゃべり続けた。
君が泣きついてくるだろうと思っていた。
しかし予想に反し何の反応もない君にイライラして振り向くと、声を殺し涙をこらえる君がいた。
君はたった一言
「ごめんね」
そう言った。
その姿がやけに弱々しく、そして他人じみて俺には映った。
君と別れ1ヶ月がたったある日。
トイレの芳香剤を替えようとして俺は息をのんだ。
見慣れた君の字が目に飛び込んだ。
「7/7七夕
ずっと一緒にいれますように」
ずっと一緒にいれますように」しばらく佇んでいた。
気付くと頬が濡れていた。
窓から蝉の鳴き声が聞こえていた。
タクシーが止まり、我に返る。
スクランブル交差点で信号待ちをしていた。
どうやら少し眠っていたらしい。
iPodの曲がかわる。
safariiの[この恋にさよなら]が流れる。
感情なく外を見ていた俺の視界が止まる。
見慣れたどこか懐かしい君の姿が目に飛び込んだ。
肩より伸びた髪が風になびき、太陽の光でキラキラと輝いている。
カーキ色のトップスに白いスカートが良く映える。
背筋を伸ばし颯爽と歩く君の姿には、もう、俺の半歩後ろを歩きたがる昔の面影はなかった。
俺は思わず身を乗り出した。
その瞬間、iPodの電源が切れた。
運転手「どうしました?」
俺「あ、いや…大丈夫です」
タクシーが走り出した。
君の姿はもうなかった。
見間違いだったのかもしれない。
少し頭痛がする。
走る車内
流れる景色に目を向けていると、窓に、頬を濡らした俺の顔が歪んで映っていた。
ひとりきり泣いて泣いて泣いて
もうアナタを愛せないって泣いて
涙も思い出も置いてゆこう
これ以上一緒にいたら
お互いダメになってしまうから
終わりにしようこの恋にさよなら
この恋にさよなら/safarii
