私は、あるダンスを習っている。金が続かなくてもうやめるけど、習い始めたときから数えると、八年目になる。でも、今もすごい下手だ。代講の先生が来ると、習い始めたばかりだと思われてしまうくらいに。子どもの頃からずっと、体を動かすのが大の苦手だった。ダンスを習い始めて、やっぱり最初は本当に全然、全然、出来なくて、泣いた。でも続けてたら楽しくなってきて、それでこんなに長く続けてた。最初の頃に比べたら、確実に、何倍も上手になっている。だけどそれは自分の中でそうだというだけ。第三者から見れば、ただのへたくそ。やっぱりね、今でも、自分の踊る姿を見て、自分でも、滑稽だなあと感じる。ちなみに、人にも滑稽だといわれたことがある。真面目にやってるのは分かるけど、変で笑ってしまうって。だけど踊ること自体が好きだったんだ。好きで長く続けてれば上手くなる、とは言うけど、それって、ある意味ホントなんだけど。確かに最初の頃の自分に比べたら上手くなってるよ。すごく上手くなってる。あの言葉の「上手くなる」は人から見て、あるいは人と比べて、「上手い」というのとは全く違うんだ。

私がカルチャースクールでそのダンスを習い始めたとき、最初の一、二年、同じクラスだった子がいた。ダンスの実力は私とそう変わらないように思えた。カルチャースクールで教える先生が交代した時に、その子はやめた。カルチャースクールで習うのをやめて、先生が所属するダンススタジオに通って習うようになった。

そして今、その子はダンサーとしてデビューしている。

先生が所属しているのと同じスタジオに所属し、インストラクターにはなっていないけど、先生のアシスタントとして先生と共にクラスで教え、ダンサーネームを持ち、ショーにはグループだけでなくソロでも出演している。先生らと共に外国で行われる有名なダンサーのワークショップに参加しに行っている。

私と彼女との差の、なんと大きいことか。

そりゃあ八年も経てば差も開くわな。最初は私と同じカルチャースクールの一番下のクラスだった彼女だけど、それからスタジオで習うようになり、たぶんクラスを取る回数も増やしたろうし、上へ上へと挑戦していったろうし、練習もそりゃたくさんしただろうし、ワークショップなども足しげく通って、、、。

自分が彼女と同じことをしていたら、どうなっただろうと考えてみた。彼女のようにはなれなかったろう、という結論に至った。

だって、そうなれるポテンシャルが私にあるならば、週一の、非スタジオでのレッスンとはいえ、足掛け8年続けたら、今より随分上手くなってるはずだもん。

あのね、レッスンは私、真面目にやってるんだよ。それに加えて、自主練もやるんだよ。それでこれだよ。八年もやってて、初心者と間違われる水準なんだよ。

普通の人なら、私と同じような条件でも八年やったら、相当上手くなってるに違いない。

うん、やっぱり、私は、特別に、出来ないんだろう。身体能力が低く、リズム感が悪く、センスもなくて。よく八年も続けてきたもんだなあ。下手で、滑稽でも、楽しかったからだよなあ。

好きで続けても、ずっとダメなままだったダンス。金がなくてやめるんだけど、未練が凄かった。だけど、元同じクラスだった彼女の活躍を知って、諦めがついた。私なんかは、やめて正解だ。