棘梨の村の李梨-2 | タコノキはうまく踊れない

棘梨の村の李梨-2

 琥珀は「南の島」から来たという母親と、村の男の血をひいていた。大きなくりっとした目が僕にはひどく可愛く思えた。けれど、村の他の子供らは母親譲りの黒い肌をからかった。僕も「
燦輝(ツアンホイ)の月足らず」とからかわれていて、からかわれ者同士だったからかもしれない、僕と琥珀は年柄年中一緒にいた。あれが、初恋ってもんだったんだと思う。
 琥珀は、よく僕の家に遊びに来た。僕の家は大きくも新しくもなかったけれど、李梨が手をかけて磨き上げ、村の他の誰の家にも負けないくらい小ぎれいに見えた。昼間は、李梨は台所にたつか、僕らと遊んでくれていたから、いま考えると、掃除や縫物は僕が眠っている間にやっていたんじゃないかな。李梨は声がきれいで、歌やおとぎ話を聞くのがとても好きだった。遊びもたくさん教えてくれた。
 李梨が僕や琥珀と遊んでくれていると、祖母がよくじろりとにらんだ。僕は祖母が苦手だった。村の子供らが僕をからかう「月足らず」という言葉を言い出したのが僕の祖母であることを、誰からともなく聞いていた。
 村には未熟児で産まれた子供がいて、体が弱くて小さかったけれど、祖父母たちも親たちもひどく大切にしていた。誰もその子を「月足らず」とののしったりはしなかった。僕はとくに弱いわけではなかったし、同じ歳の子どもにくらべて小さいわけでもなかった。
 二人目の子供を持つことが禁止されていたから、一人の子供を、二人の親と四人の祖父母がよってたかって可愛がるという家が多かった。僕は、祖母と父と李梨と四人暮しで、村のなかで、一家族としては少人数だった。李梨は村の外の遠いところの出身で、母方の祖父母もとても遠いところにいるのだと教えられた。父方の祖父はすでに亡かった。そのことは理解していた。しかし、僕の祖母だけが孫である自分を可愛いがってくれない理由は、わからなかったし、辛かった。