The Silver Tassie 銀杯
@世田谷パブリックシアター
作 ショーン・オケイシー
翻訳 フジノサツコ
演出 森 新太郎
音楽 国広和毅
上演時間 2時間45分。
(75分 休憩20分 70分)

出演
中山優馬 矢田悠佑 横田栄司
浦浜アリサ 安田聖愛 土屋佑壱
麻田キョウヤ 岩渕敏司 今村洋一
チョウヨンホ 駒井健介 天野勝仁
鈴木崇乃 吉田久美 野田久美子
石毛美帆 永石千尋 秋山みり
山本亨 青山勝 長野里美 三田和代
総勢22名、若手から大ベテランまで豪華役者陣。
森さんは、アイルランドに留学もしたし、アイルランド作品、作家多いイメージ。
銀杯のあらすじや時代背景を観ると、予習が必要な難しい作品だと勘違いするかもしれませんが。
ビッグフェラーに比べたら、前知識無しでOK。
皮肉をこめたコメディや、音楽劇、人形劇で、中高生が観ても楽しい。
90年前のアイルランド。
フットボール⚽クラブチームを三度の優勝に導いたスター選手ハリーヒーガン(中山優馬)が、第一次世界大戦の出兵を期に人生が変わってしまう。
街の人、恋人、友人たちは、ハリーを英雄としてもてはやし、戦争から帰るとさっと掌を返す。
1~4幕もので
1幕、再出兵前のハリーが優勝のゴールを決め、恋人と銀杯を手に揚々とヒーガン家に戻る、輝かしい場面。
2幕、がらっとかわり、真っ暗で、煙ったフランス戦場の朽ちた修道院。後ろには大砲。
ハリーの戦友バーニー(矢田悠佑)以外は全員、人形を操り演じる。バーニー以外は名前がない。
ハリーは出てこない。
3幕、キリスト教の病院、相部屋の病室。
ハリーは戦争で脊髄を撃たれ下半身が麻痺し、車椅子。なぜか、元気そうなハリーのパパシルベスターとその友人サイモンも同室に入院してる。
4幕、フットボールチームクラブのダンスホール。みんな歌って踊って、お酒を飲んでねパーティーシーン。
ハリーの恋人ジェシー(安田聖愛)は、バーニーに心変わりしてしまい、ハリーはイライラして車椅子で二人のあとをストーカーのように付いて回る。そのあとをハリーのママが心配そうに付いて回る。
舞台に長方形で傾いた箱みたいな部屋がずっと浮かぶようにある。
八百屋舞台を横から見てる感じ。
役者さんは転びそうに大変だ。
一見、不思議な構成になっている。
ハリー、人生最高な時🏆
↓
ハリー抜きで、グロテスクな等身大人形劇。
(一番泣かせる)
↓
戦場で撃たれ車椅子生活で絶望したハリーを見守る家族、そして裏切る恋人、友人。
出兵前は暴力亭主だったテディ(横田栄司)、両目視力を失い、妻フォーラン夫人(長野里美)に逆に叩かれる(KYなことをばらすから)立場に。
↓
ハリーはずっとイライラし、元恋人、友人をなじり、みんなに八つ当たりする。
ほぼ全編を通して、漫才コンビのようにストーリーテラーのようにとぼけたおしゃべりを続けるシルベスター(山本亨)とサイモン(青山勝)の存在が不思議だし、息がぴったり。癒される。
(この二人は何度も共演してるらしい)
ハリーのママ、ヒーガン夫人の三田和代さんは、夏に脚本家協会トークショーを観に行った時に、いろんな三田さんの歴史を知ったけど。
劇団四季で鍛えただけに、もりしんさんも一番声が出てると称賛するほど声がはっきりと伝わる。
ママだけはずっとハリーを見守り、味方だ。
反戦劇だろうけど、2幕の人形劇でぎゅっと濃い悲惨さ、無意味さ、不条理さをみせるが、他は、当事者以外はわりと呑気に歌い、踊り、飲んで、人より自分、過去よりもいま、未来を見ている。
オケイシーも、森さんも、そんな民衆たちの姿を描きたいみたい。
森さんがアイルランドに行ってるときも、バーやカフェで、シルベスターや、サイモンみたいなおじさんたちが、たわいもない意味もない会話を永遠と続けていたそうだ。
観た人は、どこよりも2幕の人形劇に釘付けになるだろう。
公式『The Silver Tassie 銀杯』世田谷パブリックシアター2018年11月公演@ginpai2018sept
天使の歌声のように登場する担架隊と負傷者。左から #石毛美帆 さん、#鈴木崇乃 さん、#吉田久美 さん、#野田久美子 さん、#永石千尋 さん、#秋山みり さん。稽古期間中、狭い廊下に鏡を置いて動きの確認をしながら自主稽古を繰り返した絶品のチームワークから生まれた圧巻の演技!#銀杯 https://t.co/60lgakWZh5
2018年11月20日 19:30
森さんが今年アジア研修に8ヶ月行っていた時に観た、アジアの人形劇に惹き付けられ。
美術さんがわざわざ現地に来て、インドネシアジャワ島の人形劇をモデルにオリジナルで造ったそうだ。
役者さんは、本読み中に、突然、
『2幕は人形劇!』と知らされたそうだ。
もちろん、人形使い、人形劇出身の役者さんではなく、セリフを覚え、歌いながら、等身大の重い人気を操るというハードな稽古&本番。
黒子だけど顔だけ出てるが、ちょっとでも顔が目立つと森さんに怒られたそうだ。
稽古から本番まで、分身のような人形を役者さんたちは愛着がわいて愛しいらしい。
しゃべるときは、指二本で動かすのが大変。
舞台が傾いているから、むしろ、じっと立っている時の体勢が一番辛いんだって。
この前も書いたけど、この2幕人形劇。
森さんだけのオリジナル。
生身の役者さん以上に人形に魂が入っていて素晴らしい。
下級兵士は戦場で、最前線に出され、砲火で焼かれたり理不尽に死んでいく。
その前のつかの間の友情、休息がほほえましくかなしい。
歌が心、揺さぶる。
役者さんによると、森さんからは、うまく歌うなと指導されたそうだが、心に響く。
2幕を語ればキリがない。
人形劇をつくってほしい。もりしんさん。
世田谷パブリックシアター@SetagayaTheatre
【『The Silver Tassie 銀杯』メディア情報】本日の朝日新聞夕刊に劇評が掲載されています!無料会員登録でリンクページからも全文ご覧いただくことができます。タイトルは「戦場場面、光る造形力」是非ご覧ください。#銀杯https://t.co/5hFsDqcwlO
2018年11月22日 17:41
ハリー役の中山優馬くんは、ハイジと同じ年で、ドラマ版『バッテリー』(作あさのあつこ)からみていて、子役のイメージだったけど、最近、WOWOWの殺人者役で迫力⤴️だった。
ジャニーズのミュージカルにも出てるみたいだけど、音楽劇とはいえ、アイルランドのもりしんさん作品の主役を張るのは、かなりの勇気と努力が必要だったはず。
トークで『いつもはずっと客観的だと自負してますが、『まわりが見えなくなる』ってこういうことなんだと初めての経験です』と優馬くん。
いつも同年代か、後輩と舞台に立っている優馬くん。
銀杯。まわりが、芸達者なベテラン、実力者だらけで、これからの参考、財産になるはず。