左手さがし | サッチーのミーハーシナリオブログ

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アダム・ランバート(Queen)=神の声域
成河(ソンハ)さん=演劇の神様 をずっと応援しています。
一生懸命な人が好き。

舞台・映画・テレビ・ときどきプライベート。

(注)脚色・盛りもあります。

ただいま、絶賛公演中、
スポケーンの左手。
 
いつものように語りたいのだけど。
これから観る人、具体的なエピソードは、初見が一番サプライズで面白いのであまり書けない。
初日、度肝を抜かれたもの。

チラシやホームページにあらすじとして、
「かつて左手を無くした男が37年間、無くした左手を探す話」とかかれてあるので。
その件についてはよいかな。

約90分濃縮された時間に「張り手型」(ファーストシーンから衝撃的に始まる)で、少しずつカーマイケル(中嶋しゅうさん)の過去が語られていく。
とり憑かれたように、かなりかなり異常に、自分勝手に、他人にはおかまいなく無くした左手を追い続ける。

左手=プライド。

しかし、ひっかき回し屋のホテルフロント係マーヴィン(成河さん)の登場で、
「え?いままで少し、カーマイケルに同情、共感しながら入り込んで来たのに、、、まさかのそれ?」
と、カーマイケルの必死な一貫性行動を根本から崩されそうな疑惑が観客を襲う。

昨日観たドラマでも
「むきになるって、ことは罪を認めた事らしいよ」って台詞あったけど。

カーマイケルのあまりの感情の昂りに
「え、マーヴィンくんの言ってること、図星なの?なに、カーマイケル!天敵のチンピラ詐欺師カップルマリリン(蒼井優ちゃん)&トビー(岡本健一さん)さえ、カーマイケルに同情的なのに。そんなセルフアクシデント?」
と疑ってしまう。

でも、ややマザコンな(かなり笑える)カーマイケルとママの電話のやり取りの台詞で
「あ、やはり、カーマイケルの言ってることは真実?」
と引き戻され。

37年間左手を探し続けたカーマイケルのように。

90分の中でも私たちは簡単には真実にはたどり着かない。
ある意味永遠に謎かもしれない。

そのはぐらかし加減が、ぐっと観客を惹き付けるし、家路に着く間も
「あれは結局、なんだったんだ」と考える至福。

目の前で繰り広げられるテンポあるエピソードはあっという間の90分だけど。
かなり、緻密に間が命で、脚色も演者さんも達者じゃないと成り立たない芝居だ。

職場の休憩中に20代前半の新人女子の身の上話を聞き、いま、ちょうど夢を諦めるのか追い続けるのか揺れていた。

つい、カーマイケルが頭に浮かんで
「夢は追い続けているうちが華だよ」
と偉ぶってしまったが。

若い頃。真剣に将来を考えず、あまい夢ばかり追って、最近、やっと探し物に気付いた私。
なんとなく、目の前に転がっている左手にロックオンした気がするが。

一晩寝たら、跡形もなく消えていそうな危うい左手である。
朝、起きる度にその左手が本物なのか噛み締める。
危うい左手だから愛しい。

確実に手に入れてしまったら逆に虚無感に襲われる。