天野作市『みんなの旅行』 講談社文庫
僕たちは壊れているんだね。
そう、壊れている。
精神科病棟という大きく甘美なゆりかごで、
夢と妄想の世界に浸る記憶喪失のうつ病患者。
心の揺れを鮮やかに描写した作品。
リアルな心の叫び。
主人公を通して語られる病院での日常。
夢と妄想の世界を漂いつつ、
日々の優しさやユーモアが綴られたと思ったら、
突然、苦悩と葛藤が描かれる・・・。
「頑張っちゃ駄目、生きるだけでいいからね」
そんな掃除のおばさんの言葉に涙がこぼれたのは、
純粋にその言葉が僕の心に沁みたから。
読み終えて、とっても優しい気持ちになりました。
「生きる」ことを教えてくれる温かい作品です(^_-)-☆。