――結婚式、どうだった?
「良かったよ。あいつと彼女凄く幸せそうだった」
撥ねられる彼女と走り去る男女が乗った車。忘れられる訳がない。
――いいなぁ。私も、あんな事故にさえ遭わなければ、貴方とちゃんと暮らせるのに
「もう少し、もう少しだけ待って。身体は出来てるんだ。後は、生きた脳を繋ぐ回路が完成さえすれば君は、こんな機械式の水の中にいなくていいんだよ」
――待ってる。貴方と普通に暮らせる日を
そっと、君の頬に触れる。体温とほぼ同じ温度に保たれた疑似血液は、生温かい。
頬に触れながら思う。きっと君とあいつは覚えてないんだろうね。君は、君本来の記憶を消去して彼女の記憶を捻じ込んだから、覚えてなくて当たり前だけど。
君達はずっと親友だと思ってたのに酷いよ。
結婚の約束をしてた彼女を轢き殺したのは君達だって知った僕の絶望、分かる?結婚を目前に幸せそうに笑う君達を、笑顔の裏でどんな絶望と憎悪を抱えて見てたか分かるかい?
でもね、もういいんだ。君は何故か分かる?復讐が完成するからだよ。
あの日、君を殺して脳をこの維持装置に定着させたあの日、いやもっと前から僕は狂ってたんだね。すっごく興奮したよ。
君は彼女の代わりにはなれない。でも、僕の心を怪物から掬い上げる安定剤にはなる。
あいつは僕の作った完璧なアンドロイドを君だと思って、愛していればいいんだ。顔も身体も感情も、完璧に君をコピーした僕のアンドロイド。見破れる訳がない。
そしていつか気付いて絶望しろ。逃げたつもりが僕の掌の上で転がされてただけなんだって。
彼女はきっとこんな僕、悲しむだろな。でもね、もうやめられないんだ。
この先にどんな絶望を、見せてくれる?
君も、死ぬまで道具として使ってあげる。
――ねぇ
「なぁに?」
――愛してるわ。貴方は?
「愛してるよ」
愛してないよ。
「良かったよ。あいつと彼女凄く幸せそうだった」
撥ねられる彼女と走り去る男女が乗った車。忘れられる訳がない。
――いいなぁ。私も、あんな事故にさえ遭わなければ、貴方とちゃんと暮らせるのに
「もう少し、もう少しだけ待って。身体は出来てるんだ。後は、生きた脳を繋ぐ回路が完成さえすれば君は、こんな機械式の水の中にいなくていいんだよ」
――待ってる。貴方と普通に暮らせる日を
そっと、君の頬に触れる。体温とほぼ同じ温度に保たれた疑似血液は、生温かい。
頬に触れながら思う。きっと君とあいつは覚えてないんだろうね。君は、君本来の記憶を消去して彼女の記憶を捻じ込んだから、覚えてなくて当たり前だけど。
君達はずっと親友だと思ってたのに酷いよ。
結婚の約束をしてた彼女を轢き殺したのは君達だって知った僕の絶望、分かる?結婚を目前に幸せそうに笑う君達を、笑顔の裏でどんな絶望と憎悪を抱えて見てたか分かるかい?
でもね、もういいんだ。君は何故か分かる?復讐が完成するからだよ。
あの日、君を殺して脳をこの維持装置に定着させたあの日、いやもっと前から僕は狂ってたんだね。すっごく興奮したよ。
君は彼女の代わりにはなれない。でも、僕の心を怪物から掬い上げる安定剤にはなる。
あいつは僕の作った完璧なアンドロイドを君だと思って、愛していればいいんだ。顔も身体も感情も、完璧に君をコピーした僕のアンドロイド。見破れる訳がない。
そしていつか気付いて絶望しろ。逃げたつもりが僕の掌の上で転がされてただけなんだって。
彼女はきっとこんな僕、悲しむだろな。でもね、もうやめられないんだ。
この先にどんな絶望を、見せてくれる?
君も、死ぬまで道具として使ってあげる。
――ねぇ
「なぁに?」
――愛してるわ。貴方は?
「愛してるよ」
愛してないよ。