二人を見る。ただぼーっと惚けた顔をして瑠璃を見つめている城田君。
種子を植えつけられたまま白目を剥いて倒れてる、松田君。
このまま行くと松田君は、薔薇に喰い潰されて消滅。お陀仏にもならない。
夏目さんはどうなったんだろう。

「ちょっと様子見てくる」

【蒼はまだ食事をしていませんよ。どうやら、誰かが蒼の食事の妨害をしているようです】

早苗さん……かな。蒼薔薇の妨害は出来ても、瑠璃の妨害は出来なかったんだ。

【呪詛返しをしてもいいのですが、些か分が悪いですからねぇ。仕方ありません。分けてあげるしかなさそうですね】

【そうした方がいいだろうね。“奴”がワタシ達の思った通りの人物なら、奴らは既に気が立ってるだろうから余計な刺激は与えない方がいい】

【全く、迷惑な話ですね。私達は人間と違って、必要な分しか食べないと言うのに。なぜ私達までとばっちりを受けなければならないのでしょう】

溜息を吐きながら顎に指を添える。細められた瞳。憂いを帯びたその姿。憂いを帯びた闇色の瞳。美しい。



「皆、大丈夫?」

皆のところに走って行ったら、三人共荒い息をしながら惚けた顔をしてる。

「だ、大丈夫……。いきなり、夏目の芽が消えて…あいつらは?」

三人の中でまだ冷静な佐名内君が、僕を見上げてくる。

「分からない。いなくなってた」

「出口見つけて先に逃げたんじゃないの!?」

流石に怯えてるのか、指を震わせながら怒りをぶちまける。
そもそも来たのが悪いのに。よかったね。命拾いして。ちょっと余命が延びただけだけど。

【うぅぅ……お兄さん酷いんだよ!誰かがボクと薔薇の関係を切って、ただの薔薇にして枯らしちゃったの!わあぁーん!ボクの薔薇ー!】

食糧を喰い損なったことより、薔薇を枯らされたことがよっぽどショックみたい。僕の腰に抱きついて、泣きじゃくる。慰めるために、頭を撫でる。



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