じかんざぶとん②(つづき)
しかし、誰に何を言われてもときちゃんは気にしません。なにかやりたいと思ったら、勢いよく家から飛びだし、森のなかの道なき道、路地裏、風の通り道や土の中まで、いろんな道を探しだしては、ずんずん突き進みます。それから生まれたばかりのハリネズミの双子のあかちゃん、ぺぺとピッパのためにやわらかなベッドをつくったり、アゲハのマリブと花を転々として、香りをうつした花びらの栞をつくってみたり、はたまた古くから森に住みついているみみずくおじいさんのサロンで、木の葉を摘んでお茶にする方法を教えてもらったり、
雲のもくもく先生と、いろんなカタチの雲を絞っておいしい水をつくったり…。
それはそれはどれも楽しくて、時間が経つのも忘れてしまうほど。
帰りが遅くなってしまった時には、さすがにお母さんも心配そうに、家の前で行き来しながら待っているのですが、
それでも満面の笑みで、オーロラ色のざぶとんに乗って帰って来たときちゃんの姿をみると、安心した様子で、「今日も楽しかったのね、よかったわ。」と、にっこり微笑みながらぎゅうっと抱きしめて、お帰りのあいさつをしてくれます。ときちゃんは、この時、お母さんから漂うにおいで、その日のご飯が何なのかがわかります。「今日は私の大好きな森のきのこのスープに、お豆腐のハンバーグ、それから…、
そう、緑の豆ごはんね!」
そうして二人はご飯を食べながら、
「ねえねえ、お母さん、今日はひつじ雲を絞って水をつくったの。思ったよりも流れが早くて集めるのにずいぶん苦労したんだけど、その水でお茶を淹れるとオレンジ色になって美味しくなるのよ!
それにね、いつまでも温かいの。
雲のカタチで色や味が変わるなんて知らなかったわ!」
などと、その日にあった楽しかったことや不思議に思ったことなど、お母さんにひとしきり話します。ときちゃんが見たもの、感じたことを身振り手振りとても細かなところまで丁寧に話してくれるので、お母さんもまるでそこにいるかのような気分になり、うんうんと楽しそうにうなづきながら最後まで聞いてくれていました。
そして一日存分に働いた心地よい疲れと、好奇心を満たした満足感から、カラダいっぱいに大きな欠伸をひとつすませ、ふかふかのざぶとんを枕にして、朝までぐっすり深い眠りにつくのでした…。
(つづく)
これまでのお話は、
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にまとめていきます。
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完成するまで何度も書き直したりするかもしれないので、それも含めて楽しんでみてくださいね。
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