1979 Musicman Sabre Bass 奮闘記 その1 | Tsuyoshi Adachi official weblog "Fresher's Road"

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茨城県を拠点に活動している作曲家・ベーシスト あだちつよし のブログ

ミュージックマンのベースというと誰もが思い浮かべるのは「スティングレイベース」だと思いますが、「セイバーベース」の存在を知っている人は現役のベースプレイヤーでもそれほど多くないのかもしれません。
セイバーベースはスティングレイベースが誕生した2年後の1978年に「スティングレイの上位機種」として誕生しましたが、売れ行きはスティングレイほど伸びなかったため生産期間は短く生産本数も少なかったようで、現在の中古楽器市場でもお目にかかるのはとても稀なことです。
しかしながら、1980年代初頭にベースを弾き始めた頃からミュージックマンフリークだった自分にとっては、セイバーベースはスティングレイベースと同様に憧れの楽器で、当時からいつか手に入れることを夢見ていました。
そしてその夢が叶ったのは、それから20数年後の2007年のことでした。



実は、僕は実物のセイバーベースをこの時まで見たことが一度もなかったのです!
これを売り出していた楽器店も遠方だったので、購入前に試奏することも出来ませんでした。
でも、このチャンスを逃したら次いつ出会えるか分からないと思い購入を決めたのでした。
それにしても、我が家でこのセイバーベースと初対面した時はさすがに感慨無量でしたね。

さて、僕が何故このセイバーベースが好きかというと、僕がエレキベースに求める条件をほぼ完璧に満たしているからです。
それって当たり前のように思えるかもしれませんが、世界中に山ほどエレキベースがあれど自分にとって非の打ち所がない完璧なベースってなかなか出会えるものではないんですよね。

セイバーベースの好きなところを細かく挙げてみると...

<ボディー>
僕はいわゆるジャズベタイプよりもプレベタイプのボディーが好みで、セイバーベースはそのプレベよりも更に引き締まったボディーシェイプになっていて、抱え具合が非常に良いのです。
素材はアッシュですが、重過ぎず軽過ぎずの程良い重量感です。

<ネック・ヘッド>
これは偶然だったのですが、このセイバーベースには当時オプションだったと思われるナローネック(ナット幅 約36mm)が取り付けられていました。
ネックはジャズベのような細身のタイプが好みなので、これはラッキーでした。
ミュージックマンの特徴である3:1に配置されたペグと、それにより小振りになったヘッドの形状もお気に入りのひとつです。

<ピックアップ>
セイバーベースにはハムバッカーピックアップが2基搭載されています。
本来はジャズベのようなシングルコイル2基が好みですが、それはコイルタップスイッチなどを着けることで対応出来るでしょうし、音のバリエーションもより多く作れると思うのでOKです。

<コントロール部>
コントロールノブやスイッチはなるべくシンプルな方が好みです。
セイバーベースのコントロールは3ノブ(ボリューム、トレブル、ベース) と3スイッチ(ピックアップセレクター、フェイズスイッチ、トレブルブースター)という構成です。

まぁギリギリ許容範囲ってところですね。
アウトプットジャックはボディー表面に着いている方が良いです。
最近はボディーの側面に着いているベースがほとんどですが、座って弾く時などにプラグが座面に直接当たってノイズが出たり音が出ないなどのトラブルの原因になることが多いです。

<外観・音>
セイバーベースは34インチロングスケールのベースの中でも非常にコンパクトに設計されていて、あまり体が大きくない僕でも弾き辛さを感じることはありません。
それに、そのコンパクトボディーとは裏腹に出音は図太くパワフルであるというところも魅力のひとつです。

 


さてさて、このように自分にとっては至れり尽くせりなスペックのセイバーベースなわけですが、ただ一点だけ購入時から解決出来ていない問題があったのです。
それは、「4弦のビリつき」でした。
自分が弾き易いように、ネックの反り、角度、弦高を調整すると、どうしても4弦だけ大きなビビリ音が出てしまうのでした。
確かに僕が好む弦高は標準と言われている高さ(1弦=2.0mm、4弦=2.5mm) よりもだいぶ低いですが、他の所有ベースではそのような症状が出たことがなかったのでどうしても理解出来ず、何度も知り合いの楽器屋さんに相談して、これまでにネックのアイロン処理を2回、リフレット1回、フレット擦り合わせ2回とメンテナンスをしてもらいましたが、問題解決には至りませんでした。
「初期のミュージックマンのネックは不安定なものが多い」という噂を聞いたこともあったので「このネックはハズレだったのか?」とも思いましたが、いかんせん他のセイバーベースを弾いたことがないのでそれを確認比較することも出来なかったし、楽器屋さんにも「ネックに問題はない」と言われたので、腑に落ちなかったものの他の原因を考えることにしました。
そしてその後、ネック以上に僕を悩ませたのが「マイクロティルト」でした。







マイクロティルトは、ご存知エレキギター・ベースの父 レオ・フェンダー氏が開発したネックの取り付け角度を変えるシステムですが、まず僕が分からなかったのは「マイクロティルトは必ず使うべきものなのか、必要でなければ使わなくてよいものなのか」ということでした。
それについて言及している資料も見当たらず、何が正しいのかも分からないまま使ってみるしかなかったのです。
マイクロティルトを使わないとブリッジサドルを一番低いところまで下げても弦高が高くなってしまうし、使ってみるとネックの先端に弦が当たってしまうし、ベストポジションを探すのにマイクロティルトもブリッジサドルも上下に行ったり来たりを繰り返すばかりでした。
いい加減嫌気が差して、今度は逆転の発想でマイクロティルトは使わずにスペーサーを作ってネックポケットを嵩上げしてみたらどうかとも考えましたが、納得できる結果にはもう一歩たどり着けませんでした。







そんなことを何年も繰り返しているうちに自分のテンションも下がってしまい、長いことこのベースを手にすることもなくなってしまいました。
なかなか出会えない自分好みのベースだけど、使えないのならいっその事売りに出してしまおうかと考えたことも何度となくありました。

そして、今年に入って相変わらずコロナ自粛が続く中、何がキッカケだったのか分かりませんが、ふとセイバーベースを取り出し何年かぶりに再びイジリ出したのです。
別に気負いすることもなく、以前と同じように毎日ちょこっと弾いてみては、トラスロッド、マイクロティルト、ブリッジサドルの3ヶ所を必要に応じて微調整するといったことを繰り返していました。
すると、不思議なことにいつの間にか以前のようなビビり音が出なくなっていたのです!
でもその時は「どうせまた時間が経てばビビり出すんだろう」と思ったんですが、有難いことに今のところ良い状態が保たれています。
もしかしたら知らないうちに自分のビビリ音に対する許容範囲が広くなったのかもしれませんが、いずれにしてもやっぱり楽器は生き物だなと思わされる出来事でした。

そんなわけで、今ではこのセイバーベースをメインとして使えるところまで追い込んでみたいと再び思うようになりました。
1979年製なのでギリギリヴィンテージベースの部類に入りますが、コントロール系を改良してより使い勝手の良いベースにしたいと考えています。
今後の展開をお楽しみに!

今回はここまで...。

1979 Musicman Sabre Bass 奮闘記 その2(ネック編)

1979 Musicman Sabre Bass 奮闘記 その3(コントロールサーキット編)

1979 Musicman Sabre Bass 奮闘記 その4(ピックアップ編)