残滓ひとしずくうちに置いてあるトートバッグを持ってきてほしい、と 妻から連絡がありました。 出先からうちの近くまでやってきた妻に トートバッグを渡して、ファミレスで小一時間。 僕の住む部屋にはまだ妻の物がたくさん残されていて、 こうして時々、妻が持ち帰りたい物を渡すことがあります。 これを何度も繰り返したら、 やがて妻が必要な物はうちから無くなるのでしょう。 今日のトートも、残滓のひとしずく。夫婦の名残です。 駅の改札まで妻を送り、その背中を目線で追いかけ、 一瞬時計に目をやったら、もう姿を見失いました。