Fは妻と別れてくれだとか自分と結婚してくれだとかを
言うことはありませんでした。
ただ関係を解消することには強い拒否反応があるようでした。
僕としてはこんなことをしてはいけないと思う気持ちと、
彼女と一緒にいることによって得られる
心の平静との間で葛藤がありました。
してはいけないもの。
しかし依存性があってやめられないもの。
それはさながら麻薬のようでした。
この間にも不妊治療は続きました。
妻はクリニックに通い続け、
僕は精子を提供し続け、
仄かな期待は裏切られ続けました。
そして結果が出なくても深いショックを受けなくなったころ、
僕は「逮捕」されることになるのです。