不妊治療が実を結ぶのは、とても幸運なことだと思います。

元々授かりにくい人が年齢を重ねれば重ねるほど、

願いを叶えることが困難になるのは言うまでもないことでしょう。

 

それでもいつか授かると信じてその困難に立ち向かう。

膨大な労力とお金を使って長期間クリニックに通い、

時に遠方まで足を運んで願掛けをし、

時に迷信としか思えないようなジンクスにさえすがる。

それはひとえに「授かりたい」と強く願うからです。

 

うまくいかなくても、「もう1回やれば」と思ってしまう。

やめようと思っても、「もしかしたら次に」と思ってしまう。

 

けれど、どうにもならないこともある。

どこかで心の中の自分を説得して諦めざるを得ないこともある。

 

「ゼロ」か「イチ」かの違いは果てしなく大きく、

このふたつが深くわかり合うことはできないのかもしれません。

 

「ゼロの人」から見れば「イチの人」はとてもうらやましい存在です。

自分はこうやって授かった、がんばって、と

心から思い励ましてくれる善良でやさしい人。

 

わかってはいても、その善良さ、そのやさしさが心に刺さることもある。

そう感じるのは、せっかく助言してくれる人に対して忍びないし、

何よりとても悲しいことだけれど。

 

たとえこの機微をわかってもらえないとしても、

どうかこの気持ちを、ひがみだとか卑屈だとか呼ばないでほしい。

あなたたちが持っているものを、

僕たちは永久に手に入れられないのです。