自分がこんな日本語を使う立場になるなんて、
妻と出会うまで思いもしませんでした。
母を大切に思う、とてもよい子です。
妻が毎月会うのを楽しみにしていた気持ちもよくわかります、
と言いたいところですが、
母子の絆を見せつけられるたび、
どこか複雑な心境でもありました。
子を持つ親の気持ちを芯から理解することは、
やっぱり僕にはできなかったのだと思います。
それでも妻にはその都度、
少しですが小遣いを持たせ、
快く送り出しました。
このときの気持ちに嘘は全くありません。
しかし妻が娘に会いに帰省するたび、
僕は自分に子がないことを思い知らされました。
誰にも話せないこの気持ちを、
長い間胸に秘めて生きてきました。