僕が妻に子作りのことを話せなくなってしまったのには、
ある決定的な経緯がありました。
入籍してしばらく経ったあるとき、
僕は避妊をしませんでした。
意図的にそうしました。
子どもがほしい気持ちと、
夫婦の約束を守らなければならない気持ち。
相反するふたつの気持ちが膨らんで
抱えきれなくなった結果だったのだと思います。
理由はともかく、約束に反する行為であり
僕がいけなかったと反省しています。
妻はそのとき、「テンション下がる」と吐き捨て、
露骨に嫌な顔をしました。
愛する妻の、初めて見る表情でした。
このとき、直感的に、僕よりも娘を取ったのだと感じてしまいました。
いま思えば、妻にそこまでの意図はなかったのかもしれません。
きっと反射的に出た言動だったのでしょう。
それに「自分より娘を取った」などと思うのは愚かなことです。
どちらも同じく大事に決まっている。いまはわかるつもりです。
ともあれこの出来事は以後僕の深いトラウマとなり、
頭から離れなくなりました。