近藤大介
近藤大介
1965年生まれ。埼玉県出身。東京大学教育学部卒業後、1989年に講談社入社。
月刊「現代」副編集長を経て、現在「週刊現代」副編集長。
--引用「東アジアノート」P.147~148 2006.06.23第一刷発行 ランダムハウス講談社 近藤大介著--
「北京版ダボス会議」
ダボス会議に参加するのは、世界に名だたる多国籍企業の経営者や、世界経済の動向に影響力を及ぼす政治家や官僚、研究者たちである。あくまでも「プライベートな参集」を謳っている手前、通常の国際シンポジウムと違って、マスコミの出入りは厳しく制限されている。
二〇〇四年のチャイナ・ビジネス・サミットの参加者は計五六九人。日本からの参加者は、共同議長を務める秋草直之富士通会長以下一九人だった。ちなみに世界から集まったジャーナリストは計一六人、日本からは私一人である。
会議に先立つこと数ヵ月前、私はアメリカ人の知人からこの会議が秋に北京で開催されることを聞き、スイスに参加申請書を出してみた。求められるままに学歴や職歴、著書や論文などを詳細に書いて送ったところ、二人のアジア担当者が日本に出張した際に、面接を受けた。
面接と言っても、初老のフランス人男性と部下のタイ系アメリカ人女性に、東京・六本木ヒルズにあるグランドハイアットホテルのレストランで、豪華な朝食をご馳走になりながら雑談しただけである。彼らは主に、私が属する日本の出版業界の事情について質問してきたが、それは単に形式的なもので、私の人物像を観察することが主目的であることは明白だった。
それから一ヵ月ほどして、招待状が送られてきた。通常の法人会員の場合、年間約二万ドルの会費に加えて、チャイナ・ビジネス・サミットに参加するには、一人あたり三〇〇〇ユーロ(約五〇万円)の参加費がかかる。往復の飛行機代や現地での滞在費なども含めれば、かなりの出費だ。だが私の場合はジャーナリスト枠なので、会費や参加費は免除された。
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この「東アジアノート」のサブタイトルは、「小泉訪朝同行記」である。
2回に亘る、小泉訪朝に同行取材した近藤氏の、取材メモが結実した「傑作」である。
近藤氏は新聞記者ではないので、速報性を要求されない。
従って、北の様子をじっくりと観察できる。
その上、近藤氏は強烈な好奇心と、抜群の洞察力、北との独自人脈で、小泉訪朝の表と裏を活写する。
とにかく、取材方法が破天荒なのだ。
立ち入り禁止区域でも平気で突入していく。
この本は2度に亘る小泉訪朝の他、
・第三章:北京版ダボス会議
・第四章:「陳水扁の台湾」現地報告
・第五章:「盧武鉉の韓国」現地報告
の5つの取材メモから構成されている。
小泉訪朝同行取材も抜群の面白さだが、北京版ダボス会議の模様も生き生きとした描写で甲乙付けがたい。
この章のサブタイトルは、10個ある。
10個のコンテンツは総て興味深くあっという間に読みきったが、特に秀逸なのは共同議長を務めた富士通の
秋草会長のスピーチが収録された「富士通会長の驚愕スピーチ」である。
正に、正に「驚愕」であった。