私はベルカント唱法とアクート唱法は異なる歌唱法と提唱していますが・・・
このアッポジオ(支え)の技術は両方の歌唱法に共通する最高難度の歌唱技術と考えます。
アクートの歌唱法よりも難しいと考えます。難しいが故に・・・・アッポジオの技術を習得することにより、女性がベルカント唱法で歌うがごとくに、男性歌手にもパッサッジョを意識することなく、パッサッジョ域を挟んで・・・、胸声~アクートをオートマチックにつないでいく歌唱を可能にします。
但し、再三触れていますが・・・、「下腹に力を入れる」「背筋に力を入れる」「丹田に・・・」「横隔膜を下げて・・・」等の様に、「○○に力を入れて・・・、意識して・・・」的な概念的な腹式呼吸とは全く異なるものです。
アッポジオは歌唱の際のブレスのタイミングで常に新しく生まれ、「支えられてしまう寄り掛り所」なのです。
この「寄り掛り所」に寄り掛り乍ら歌唱は展開し、この「寄り掛り所」を梃にアクートは生まれます。
しかしながらこのアッポジオの歌唱技術は、二重支点、すなわち喉でも支えている内・・・・つまり喉声の内は習得できません。
喉から声が外れ、支えがアッポジオに一本化されて初めてその感覚は育って来ます。
時折、アッポジオを誤解してパッサッジョ域で声帯及び背筋、腹筋などをフィジカルに使い、力づくで胸声のままキューゾしている動画も耳にしますが・・・
アッポジオは意識的な力みではなく「支えれれてしまう呼吸の摂理」です!
そうなってしまう・・・ことが大切なのです。そうでなければファルセットの高音域までアクートを支えることは不可能です。
ブレスの都度、アッポジオは生まれ・・・アクートを支えます
フレーズの終わりのブレスで一瞬に空気が取り込まれる音が聴こえます
吸うのではなく、気圧の差により肺が一瞬で空気で満たされます
そして、重さを伴って歌唱を支え続けます・・・
《冷たき手》 抜粋
《星は光りぬ(T)・哀れみも誉も愛も(Br)・誰も寝てはならぬ(T)》 抜粋