同じ男性の声種でもテナーとバリトン・バスでは若干の捉え方の違いがあります。

特に換声点が顕著なバリトン・バスはベルカント唱法に有りがちな・・・「喉を開けて」「喉を広げて」「力を抜いて」等の方法論による指導ではアクートは非常に遠いはずです。

しかし、国内ではこの「開けて」「広げて」の指導が主流の様に感じます。

アクートを胸声の延長で歌ってしまう歌手が非常に多い事からも頷けます。

しかしながら・・・パッサッジョ域で「開けて」歌ってはアクートにはなりません! アクートを習熟した教師であれば絶対に「開けさせない」はずです。

呼気が声帯の間を通過するまで閉じなければいけません。

ただ、胸声の延長で閉じたのでは・・・力尽くの強烈な喉声にしかなりません。更にアクートをファルセットの高音域まで広げることなど不可能です。

胸声のまま声帯を閉じた場合、閉じる力が圧倒的に強すぎて呼気は通過出来ないからです。ここを間違えると絶対にアクートには結びつきません。

確かにパッサッジョ域で閉じますが、胸声のポジションで閉じてはいけません。

要するに、バリトン・バスもジラーレとキューゾのタイミングなのです。

更に、決して音を追いかけてはいけません!・・・音を狙うと必ず喉声で操作してしまいます、結果として喉が絞まります。

ファルセットも意識してはいけません!・・・ファルセットを意識すると開き声になります、結果としてこれも「開き声」と言う喉声になってしまいます。

ジラーレしながらも、低いポジションのまま声帯が「鳴る」まで意識をコントロール、キープできるか!?

ここが、バリトン・バスのアクートの分かれ目です。

ここを克服しない限り、開き声か強烈な喉声で妥協するしかありません・・・


【アクートの実践】

下の動画は発声練習の一番上の音でアクートに持っていくための練習方法です。

音階練習の上の音は声では無く、閉じた声帯の間を呼気が鋭く(アクート)突き抜けていく際の通過音・・・、声帯が振動する音です。

胸声の延長では無い証拠に・・・

ファルセットの高音域まで統一された鋭い響きで広がっていきます。ここを胸声(地声)の操作で処理しようとするとアペルトか硬直した喉声になってしまうのです。

勿論、ファルセットでは無いことは「一聴瞭然」だと思います。

時に、ファルセットやミックスボイス系の声をアクートと称するサイトもありますが、明らかにアクートとは声の持つエネルギーが異なります。


【K-メソッド】