声楽を始めてから随分経ってからでしょうか・・・「美空ひばり」さんの歌の凄さが感じられる様になりました。
「美空ひばり」さんの歌の奥深さ、類い稀なるその歌唱・・・圧巻です。
オペラ歌手はつねに第三者を演じます。つまり登場人物を演じます。そして聴衆はその第三者(登場人物)に感動します。往々にして演歌は演歌歌手が第一人称で歌います・・・時に楽しそうに。
同じ歌であっても、オペラと演歌の違いは先ずここにあります。演歌歌手か自身を一人称で歌うのに対し、オペラ歌手は三人称(第三者)を歌い演じ切ります。そしてオペラの聴衆はその登場人物の歌・ドラマに陶酔します。
演歌、オペラ・・・どっちがどうのの話では無く、それぞれの歌の楽しみ方が違うと言う事です。
しかしながら・・・時に演歌の中にもオペラ的な歌唱・・・そして感動を感じることがあります。
それがこの「悲しい酒」です。彼女が美空ひばりを歌っているのではなく、「悲しい酒」の当事者がそこにいるのが感じられるのがスゴイです。何度聴いても心に沁みる。芸術と言う事でしょう。
「ひとり・・・酒場で飲む酒は・・・」この「ひとり・・・」の一歌で聴衆を彼女の歌の世界に引きずり込む歌唱力・・・、声色でどうの、歌いまわしでどうのでは誤魔化せない歌唱の神髄です。
歌のジャンルを問わず大いに見習うべき、勉強すべき歌でしょう・・・