構音障害(dysarthria)は、口唇や、舌、咽頭、喉頭などの構音器官の異常によって、発音が正しく出来ない状態のことです。

構音障害は、その原因により以下の4つに分類されます。


1.器質性構音障害:音声器官における形態上の異状により引き起こされる発音上の障害

2.運動障害性構音障害:音声器官の運動機能障害による発話の障害

3.聴覚性構音障害:聴覚の障害による二次的な発音上の障害

4.機能性構音障害:上記のような医学的原因の認められない本態性の発音の障害

ここでは、脳血管障害や、顔面神経麻痺、パーキンソン病、小脳疾患、球麻痺などの疾患によってみられる運動障害性構音障害についてみていきます。

まず、構音障害の有無の確認は、以下の発語をさせて確認します。

『ラリルレロ』(舌音)
『パピプペポ』(口唇音)
『ガギグゲゴ』(口蓋音)
『パタカパタカパタカ』

そして、他の神経所見(ここでは割愛いたします)から構音障害を鑑別します。次に、疾患による構音障害の特徴を示します。

(1)脳血管障害
上位運動ニューロンの障害で、延髄より高位の皮質延髄路の障害により起ります。
片麻痺と同側の顔面および舌下神経麻痺を示すものでは、軽度の構音障害を認めます。両側大脳半球や、脳幹部の血管障害では、仮性球麻痺となり、著明な構音障害(痙性構音障害)を示します。相同性伸長反射の亢進が原因とされています。

(2)パーキンソン病
口唇や舌の筋強剛のために構音障害を示します。発語は不明瞭で緩徐、調子は単調です。

(3)小脳疾患
不明瞭発語で、とぎれとぎれで言語緩慢となり、調子は不規則です。重症になると爆発性発語になります。酒に酔った状態のような発語です。

(4)球麻痺
下位運動ニューロンの障害で、舌咽、迷走、舌下神経の障害によって起ります。構音筋の麻痺と萎縮(弛緩性構音障害)により障害が生じます。まず、唇音 (パピプペポ)が障害され、ついで舌音(ラリルレロ)、歯音(サ行)、喉頭音(カ行)なども障害されます。軟口蓋麻痺になれば、鼻声になり、ALSの末期 によくみられます。

(5)重症筋無力症:しゃべっているうちに、言語は次第に緩徐、不明瞭になる。休息させると回復します。

 構音障害や嚥下障害のみられるパーキンソン病患者さんは、頭板状筋や胸鎖乳突筋、広頚筋、顔面筋の筋緊張の亢進がみられます。これらの筋を伸張させることで症状が改善することがあります。

方法としては、胸鎖乳突筋に散鍼や、停止する完骨に置鍼を行います。リハビリテーションとしては、口の中に手を入れ、口腔内から頬筋をストレッチした り、広頚筋を上下方向にストレッチしたり、『パタカ、パタカ・・・』と発声練習(パは口唇が閉じる音、タは舌の前方が口蓋と接する音、カは舌の後方が口蓋 と接する音)を指導すること等が有効ではないかと思います。