パーキンソン病は中脳の黒質で産生されるドパミンニューロンの変性により、振戦(手足や頚の振るえ)、筋固縮(筋の動きにくさや、筋の痛みやこわばり感)、無動(動作 ののろさ、表情の乏しさ)、姿勢反射障害(転倒や前傾姿勢)を主症状とする疾患です。

 好発年齢は50~60歳代、有病率は人口10万人に対して150人と報告され、高齢者人口の増加に伴い、患者数は増加しています。また、主症状以外にも痛みや便秘、疲労感などの随伴症状を訴える患者が多く、鍼灸治療を希望して来院する患者も増えています。

 パーキンソン病は、抗パーキンソン病薬の進歩や脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation;DBS)によって天寿を全う出来る疾患です。
しかし、治療の長期化によってジスキネジア(手足や体幹部のクネクネとした不随意運動)や抗パーキンソン病薬の薬効の変化(薬効時間の短縮など)などが現れることがあります。
また、痛みや便秘、疲労感などの随伴症状に対しては、薬で症状をコントロールしにくいなどの問題点があります。
さらに、こうした非運動症状は、運動症状よりも患者さんの人生、生活の質、いわゆるQuality of life(QOL)を低下させる、という報告があります。
したがって、パーキンソン病に対する治療で大事なことは、QOLを低下させないこと。つまり、いかに満足して心地良く過ごして頂くかが重要です。

鍼灸治療は、QOLを低下させる便秘や、痛み、疲労感などの非運動症状に対して改善効果が高く、また、筋のこわばりや振戦などの運動症状に対しても良い効果がみられた患者さんも多くおられます。

 鍼灸治療は患者さんによっては、副作用も無く、QOLを維持、向上させる治療法に成り得ると考えております。