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横浜・黄金町のマンツーマン英会話「ツリーハウス」のレッスン風景を綴ります。
登場人物:
ビル:ボストン出身のアメリカ人。たまにボストンアクセントが出てしまう。
海子:アラフィフ生徒。ジャパニーズアクセントの矯正はほぼ諦めた。
海子:『Irresistible(スイング・ステート)』という映画を見たよ。
コメディ映画というより、政治風刺映画かな。
ビル:聞いたことないなあ。
海子:2020年米国公開の、比較的最近の映画です。こちら。
ビル:I already hate this movie.
海子:この映画キライだって!? まだ何も見せてませんが……
ビル:ジャケ写真がなんかイヤだ!
海子:まあまあ、食わず嫌いせずに、まずはオープニング映像を見て下さい。
政治映画ということで、歴代大統領の選挙運動中の映像が次々と出てくるのですが、誰だかわからない人も多くて。
(DVD再生開始……)
ビル:I hate this movie even more.
海子:もっとキライになったって!? まだ始まったばっかりなんだけど?
ビル:映像は君の言うように、過去の大統領候補だけど。ケネディ……カーター……これはクリントンだな。オバマ……トランプ……
問題はバックに流れてる曲だ。この曲、知ってる?
海子:え、BGM? ぜんぜん意識してなかった。BGMがどうしたの?
ビル:これはBob Segerという歌手の曲なんだ。
海子:ボブ・シーガー? ごめん、聞いたことない。
ビル:僕の世代のアメリカ人にとってはとても思い入れのある歌手だし、曲なんだ。それをこういう、ろくでもない大統領たちの映像のBGMに使われたくない。名曲に対する侮辱だ。
海子:そ、そうなのかー。
(海子の後日談)
あとで調べたところ、以下の曲でした。歌詞そのものは別に政治的ではないんですが、タイトルでもありサビでもある『Still The Same(おまえは相変わらずだな)』と、何十年たっても本質的に変わらない二大政党制とをオーバーラップさせているんでしょうね。
……などとビル先生に言うと、また怒りそうだから言わないけど。
(レッスンに戻る)
ビル:で、どんなストーリーなんだ? 聞きたくないけど一応聞いておこう。
(以下、ネタバレがありますのでご注意下さい)
海子:アメリカの小さな田舎町で、近いうち市長選挙が行われるんですが、その選挙がふとしたことから、民主党VS共和党の重要な戦いになります。
そこでワシントンから両党の腕利きの選挙参謀が乗り込んできて、町は大騒ぎ……というお話です。
ビル:どうせ、二大政党が小さな町を思いのままに振り回すんだろ。
海子:いや、それが最後には、純朴と見えた町の人々の方が二大政党に一杯食わせるっていうオチなのよ。
ビル:ありえない。
海子:なにが?
ビル:そんな展開は現実にはありえない。
仮に小さな町が二大政党に一杯食わせたかのように見えたとしても、実際には二大政党が書いたシナリオに乗せられているにすぎないんだ。
海子:とことん二大政党制に不信感を抱いてるんだね。
ビル:君だってアメリカ人なら間違いなく不信感を抱くだろう。
海子:ビル先生に徹底して不評な『Irresistible』ですが、ひとつ嬉しかったのは、こないだコストコで買ってきて一緒に試食した、アメリカ産ベーコンの産地がウィスコンシン州だったでしょう。
ビル:うんうん、覚えてるよ。旨かったよな、あのベーコン!
海子:この映画の舞台もウィスコンシン州なのです。実はこれまでどこにあるかもよくわかってなかった州だけど、短いあいだに2度もご縁があったと。
ビル:いいねえ! そういう偶然って好きだなあ。
海子:おかげで私の記憶にウィスコンシン州がしっかりインプットされたというメリットがありました。
さて、ご機嫌が直ったところで、この話題は切り上げようかな。
ビル:いや、二大政党制についてもう少し説明しておかないと。二大政党といいつつ、実は彼らは裏で手を組んでいるから、実際には一党体制なんだ。このことを英語では「The Uniparty」といって……
海子:はい、終了!