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横浜・黄金町のマンツーマン英会話「ツリーハウス」のレッスン風景を綴ります。

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登場人物:

ビル:ボストン出身のアメリカ人。たまにボストンアクセントが出てしまう。

海子:アラフィフ生徒。ジャパニーズアクセントの矯正はほぼ諦めた。

 

海子:今回は、2022年公開の映画『The Lost City(ザ・ロストシティ)』のジョークについて質問です。映画はこちら。

 

 

海子:ジャンルとしては、ロマンチックコメディ・アドベンチャー映画ですかね。

 

ビル:そういうジャンルがあるのか?

 

海子:ジャンル名としてあるかどうかはともかく、確立されたジャンルだと思うんだけど。ほら、『ハムナプトラ』とかさ。

 

ビル:『ハムナプトラ』は知らんけど、まあいいや。それで?

 

(以下、ネタバレがありますのでご注意下さい。重要なあらすじや結末には触れていません)

 

海子:主人公は、ロマンス小説家ロレッタ(サンドラ・ブロック)と、彼女の小説の表紙モデルを務めるアラン(チャニング・テイタム)です。

 

ロレッタの小説の中に、古代の秘宝のありかを示唆する記述があったせいで、彼女は秘宝を狙う悪党に誘拐され、大西洋の小島へ連れ去られてしまいます。

 

かねてからひそかにロレッタに想いを寄せているアランは、海軍特殊部隊上がりのジャック(ブラッド・ピット)とともに、ロレッタを救出に向かいます。

 

ビル:ブラッド・ピットに救出してもらえるのか? She's a lucky girl!

 

海子:だね。では最初の質問です。

 

助けにきたジャック(初対面)を一目見たロレッタは、

 

ロレッタ:"Why are you so handsome?"

(どうしてそんなにハンサムなの?)

 

ジャック:"My dad was a weatherman."

(親父が気象予報士だったんだ。)

 

これ、どういう意味?

 

ビル:I have no idea. 全く意味わからん。

 

海子:えー、ビル先生にもわからないんだ?

 

ビル:うん、全然。アメリカには、気象予報士は揃いも揃ってハンサムだっていう共通認識でもあるのか? ないと思うけどなあ。

 

きっとネイティブの中にも、海子と同じ疑問を抱いた奴がいると思うよ。調べてみよう。

 

(検索中……)

 

ビル:ほら、誰かが同じ質問をして、何人かが答えてるサイトがあるぞ。

 

出典Why are you so handsome? My dad was a weatherman : r/ExplainTheJoke (reddit.com)

 

ある回答者によれば、「テレビに出る気象予報士は総じてそこそこハンサムだが、ブラッド・ピットの方がずっとカッコいいから」だってさ。

 

海子:ふーん……。

 

ビル:「ブラッド・ピットがテレビ番組『ジム・ジェフリーズ・ショー』で気象予報士役を演じていたのにひっかけたジョーク」っていう回答もあるな。

 

どっちにしても笑えないよ。大したジョークじゃない。

 

海子:わかりにくいよね。

 

質問2にいきます。モデルであるアランは、ルックスはいいけど頭は空っぽ、という設定です。

 

ビル:ハリウッドはいつもそうだ。頭空っぽのキャラは、いつだって白人の男なんだ。反対に、知的なキャラはきまって女性かマイノリティーで……

 

海子:まあまあ。で、その設定を踏まえたジョークがいくつかあるのですが。

 

ロレッタを助け出して逃げるアランを、悪党が追ってきます。

 

ロレッタは、(すでに倒された)ジャックの銃を拾って、「Here!(ほら!)」と叫んでアランに投げます。

 

ところがアランが反射的に身をかわしたので、銃は草むらに飛んでいって行方不明になってしまいます。

 

ビル:ははは。

 

海子:どうにか逃げのびた2人ですが、さっきのことで口ゲンカになります。

 

アランは、「次に銃を投げるときは、前もって『Catch!(受け止めて!)』って言ってくれないかな」とイヤミを言います。これに対して、

 

ロレッタ:Well, "here" is a synonym for "catch."

(「ほら」は「受け止めて」の同義語でしょうが。)

 

アラン:No, "here" is not a cinnamon for "catch."

(違うよ。「ほら」は「受け止めて」のシナモンじゃないよ。)

 

無教養なアランは、「synonym(シナニム/同義語)」という言葉を知らないので、「cinnamon(シナモン)」と聞き違えるわけ。

 

これ、面白い……?

 

ビル:いや、全然。それで笑えるのは、せいぜい中学生までだろ。

 

海子:だよねえ。

 

質問3。アランは、逃げのびて空港にたどり着きさえすればもう大丈夫、と楽観しています。

 

アラン:"So you can have your cake and get what you want."

(そうすればケーキも残るし、目的も達成できる。)

 

ロレッタ:"And eat it too?"

(ケーキを残しておいて、かつ食べるってことね?)

 

これって、イディオム「have your cake and eat it too(ケーキを残しておいて、かつ食べる=両立不可能なメリットを両取りする)」のもじりだよね?

 

ビル:そうそう、そのとおり。

 

海子:アランはうろ覚えのイディオムを間違えて使っているんですね。作家であるロレッタはそこが気になって、しつこく訂正せずにはいられない。

 

アラン:「君が食べたいんなら食べればいいだろ」

 

ロレッタ:「ケーキは食べるものでしょ」

 

こんな調子で、食べる、食べないのやりとりが何度かあった末に、

 

アラン:"What about the kind people jump out of? They don't eat it, when they're in it."

(そんなこと言うなら、人間が飛び出してくるケーキはどうなんだ? ケーキの中にいるときは、ケーキ食べないだろ。)

 

これ、いったい何のこと??

 

ビル:ああ、これは難しい。アメリカ文化を知らないとわからないよなあ。

 

アランが言ってるのは、バチェラー・パーティー(独身最後のパーティー)でやるサプライズのことなんだ。巨大なケーキの上部がぱかっと開いて、中からビキニ姿の美女が飛び出してくるんだよ。

 

海子:そうだったのかー! ケーキはもちろん本物じゃないのね?

 

ビル:もちろん作り物。

 

海子:納得しました。

 

いくつか見てきましたが、『The Lost City』のジョークをどう思う?

 

ビル:ぜんっぜん笑えない。

 

だけど僕が笑えないのは、ジョークが面白くないからというより、そもそもこの映画が僕向きじゃないからなんだろうな。白人の男はもはや、ハリウッドのターゲット層から外されたんだ。

 

海子:なんだかひがみっぽいですね。

 

The Lost City』はあくまでロマコメであって、コメディが主体の映画じゃないから。白人の男が笑えるコメディ映画(っていう言い方もナンだけど)も、まだまだあると思うよ!

 

ビル:Maybe. I don't know.