大学病院の先生が書いているので末期症状での所見や、病態が載っていることが多い。実際そうではないことや、初期には表れないことなどたくさんあるので臨床で役に立たせる知識を持つ必要があると教えてもらいました。
鑑別はMRIや血液検査などできない私たちにとって大切なものです。患者さんのためにも私たちのためにも適応か不適か、また治療の組み立てにも必要です。
ここでちゃんと学びたいと思います。
まず3つに分けられます。
1、鍼灸治療継続不適切(患者及び鍼灸師に不利な状況をまねく)
2、はじめから鍼灸と西洋を併用すべき
3、鍼灸治療により症状改善が見込めるが経過により西洋医学処置が必要な場合
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1、鍼灸治療継続不適切(患者及び鍼灸師に不利な状況をまねく)
これは8項目あります。
1)バイタルサインの異常
①39度以上の高熱
②異常呼吸
③意識障害
④脈拍異常
⑤血圧異常
⑥顔色の異常
2)外傷が原因で腫脹・皮下出血・関節の不安定性・動作時荷重時の激痛
→これは骨折や靭帯断裂の可能性が高い
3)安静時の強い痛み(動作時に増悪)
運動器疾患での安静時痛
①関節包内圧・滑液包内圧上昇→骨折・脱臼・関節内出血・悪性腫瘍
②著しい炎症・滑膜炎
4)悪性疾患の可能性
①比較的最近(数か月~一年)
②階段状の悪化
③急激な発症でなく原因不明
④夜間痛(特に朝方)
⑤体重減少
⑥がんの既往歴あり
⑦保存療法が一か月以上無効
5)予後良が一定数重症化し生命の危機が及ぶもの
①痛みなし、筋力低下、筋委縮、全身各部位の運動障害
→ALS(筋萎縮性側索硬化症)緩徐進行、予後不良
→ギランバレー症候群(先行する感染症)まれに呼吸筋の麻痺あり
②痛みより運動麻痺や視力障害
→MS(多発性硬化症)
③高度な麻痺・筋委縮
6)発熱がある 免疫低下状態
7)1~3か月間の疼痛増悪 か 状況変化なし
→腫脹・強直性脊椎炎
8)片側の神経症状であるが頸部や腰部のROMに異常がない
→中枢性疾患
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2、はじめから鍼灸と西洋を併用すべき
1)痛みが激しい
2)痛みのために眠れない
3)大事な用事があり少しでも痛みを抑えたい
4)補助器具装具があったほうがよいとき
5)代謝異常(甲状腺機能低下症・DM)
6)うつ病や神経症など心因性要因が大きい
7)神経走行に沿った疱疹→帯状疱疹
*本来鎮痛解熱剤を利用するのは控えることをお勧めするがそのために生活が困難になったり体力が消耗し、回復の妨げになるならば一度痛みや熱をとりそこから免疫を上げていくことを考えるべきである。
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3、鍼灸治療により症状改善が見込めるが経過により西洋医学処置が必要な場合
1)初診時に以下の症状がある場合は経過によって考えなくてはならない
①神経症状
→しびれ 放散痛 筋力低下 筋委縮 深部腱反射異常
②病的反射著明
③悪心嘔吐 めまい 歩行障害 便通異常 手指巧緻運動障害
④間歇性跛行
⑤痛み しびれ 筋力低下 冷感 振戦(患側上下肢)
⑥その他中枢性の疾患を示唆する症状
⑦過剰な訴え・誇大反応
→心因性
⑧痛みの部位がはっきり提示できない
→心因性・内臓性
⑨治療経過で悪性疾患の可能性が生じた場合
2)経過観察の判断基準
①4~5回/2週間ほどで累積効果が予想改善レベルより大きく下回った状態
②①ほどではないが一か月経た後で①と同レベルであれば精査を進める
③鍼灸師の指示どおり受療しない場合でも改善しないまたは悪化の場合には①②に準じて判断
3)鍼灸単独でも問題ないが難治な場合
①陳旧事例(20~30年)
②治療歴が多彩(神経症の特徴)
③既往が多い
④症状発現部位の手術歴往例
⑤高齢者
⑥全身症状悪化例
⑦症状発現部位に器質的疾患病名が診断されている場合(現在過去とも)
⑧代謝異常などがベース
⑨心因性要因がおおきいとされる場合