知ってて損はないインクジェットプリンター
テーマ:印刷豆知識目に見えないような小さなインクを目にも止まらぬスピードで、さらには空気抵抗の中、印刷対象物と非接触で、しかも無圧力にて正確に着弾させるインクジェットプリンターは高度な技術がいくつも結集されている。
アクトウイング社が販売するインクジェットプリンターDMP2880GOLDで一般的なプリンターと共通する基本的な原理を説明してみよう。
インクジェットプリンターの中でも特に技術が詰め込まれていてキモとなるのがプリントヘッドである。インクを吐出する部分だ。そのヘッドを格納するキャリッジユニットは言うまでもなく重要な部分となる。
プリントヘッドにダンパー(インクカートリッジ)が乗ってキャリッジシャフトを支柱に左右に移動して液体のインクを微細なノズルから一滴づつ吐出する。
キャリッジユニットは通常ホームポジションとしてインクシステムユニットに待機してプリントヘッドの乾燥を防ぐためにキャリッジロックされています。これをキャッピングといいます。
必要に応じてインクを吸引したり、インクを吸引してヘッドの汚れをワイパーで清掃したり、吸引したインクをインクアブソーバに廃棄したりして印刷品質を安定させる重要な役割を担っています。
ここで是非とも知っていて欲しいことは、印刷開始でキャリッジユニットが動き出した時、そのキャリッジがどの位置に移動しているかがわからないと正確な印刷はできません。
その問題を解決するのが半透明のX軸エンコーダフィルムです。
このフィルムは縞模様が細かく刻まれていてキャリッジユニットの裏側にあるセンサー部で、いくつの縞模様を進んだかを常にチェックしています。
このフィルムが汚れてくるとセンサーはキャリッジユニットの動きを読み取りにくくなって印刷障害となってしまいます。例えば1200dpiで印刷を行うためにはプリントヘッドを毎秒500ミリメートルで正確に移動させながら毎秒2万5000発ものインクを吐出するだけの制御が成されているのです。
エンコーダフィルムは定期的にチェックして汚れていればメチルアルコールを湿らせた不織布などで軽く拭きとって半透明を保てるようにしておきましょう。
また平均的なA4サイズの写真印刷に打ち込まれたインク滴の数は約10億ドット。その一つひとつのインク滴を正確な位置に落とし続けて初めて高精度な印刷が可能となるわけですから。
DMP2880GOLDプリンターのプリントヘッドには1440個のノズルが搭載されていて、それぞれのノズルからは1秒間に何万個という数のインクが打ち出されます。
一般的なインクジェットプリンターの場合、ノズル吐出口から印刷対象物までの距離は1ミリ~1.5ミリに設定されています。空気抵抗の中、その距離を飛翔するインク滴は秒速6m~10mの力で打ち出され1ミリ先では約1/4の速度に低下します。さらにはプリントヘッドはキャリッジとともに左右に往復移動する際の風にも影響されます。それでいて着弾位置の誤差はわずか数マイクロメートル以内でなければなりません。これは100メートル先の的の中に100発100中で矢を仕留めるのに匹敵するほどの技術であり吐出口から着弾するのに1万分の1秒程度しかかからない技術なのです。
これらの基本を知って印刷業務を行うのと知らないのとではワクワク感が違います。込められた想いが印刷物に影響します。なぜならどんなに優れた技術が詰められた機械でも、それは単なるツール(道具)でしかありません。そのツールを操るのは人です。今の時代の付加価値印刷、それはオペレーター次第ということを私達は決して忘れてはいけないのです。