BTSが所属するBighig Entertainmentは今年IPO(株式公開)するのでは、という記事がでていた。
2018年度の純利益が50億円台、2019年が90億円台。BTS関連によって韓国経済にもたらされた経済効果は6,000億円とも言われている。
Forbesの世界のセレブランキングでBTSは堂々の47位。2019年の彼らの所得は総額約60億円($50M)だそうである。
BTSが所属するBighitエンターテインメントはBTSの成功によって短期間にこれほどの収益を上げ、韓国でも3大事務所を追い抜く勢いである。
韓国株式市場に上場するにあたり事前審査も始まったという記事もあった。いくつかの芸能事務所を買収している。パン社長の従弟が経営するゲーム会社への巨額の投資もしている。上場に向けて着実に準備を進めているように見える。では、Bighitが上場したらBTSはどうなるのか。
Bighitの収益のほとんどはBTS関連の売り上げだ。投資家は更に主益を上げ投資家に利益をもたらすことを期待する。その場合、投資家に対して翌年の経営戦略と目標を掲げなければならない。たとえば、
・グラミー賞にノミネート
・グラミー賞受賞
・グラミー賞3年連続受賞
・グラミー賞全部門受賞
・21世紀最大のボーイズグループ
・売上3年連続1,000億円
・BTSメンバー主演、映画 興行成績世界1位
などなど。
特に、現況のようにエンターテインメントビジネスが落ち込んでも、株式会社になれば収益をあげるための策を講じるよう強く要求されるはず。つまり、売り上げのために仕事をしなければならないというプレッシャーがさらに大きくのしかかることになる。
今のように自分たちが好きなように自由に曲作りやアイディアをだし動画、イベントなどはできなくなる可能性がある。自由な環境だからこそ彼らの良さを最大限に生かし、十分な練習時間も確保することができるのに、会社が上場することで彼らも所属会社の幹部も利益を上げるために仕事をし続けなければならないのである。
また、人気を左右するアイドルグループにとってスキャンダルは命取り。
これまでのような原爆Tシャツやナチスの服など歴史に関する問題や、盗作疑惑の問題など国を超えた問題を抱えた場合、当然、会社の責任も問われ、会社の上層部は責任を取って解任される恐れもある。韓国国内だけのマーケットであればさほど問題にもならなかったことが、海外では差別や偏見など誤解が誤解をうみ、思いもよろない余波が襲ってくることもある。RMの「顔が黒くてわからなかった」発言などはそのいい例である。株式上場した場合、それが株価に影響するのである。当然、その場合、マネージングスタッフの責任が問われ、問題によっては彼らが総辞職を迫れる可能性もある。信頼しきっていた周りのスタッフや上司がある日突然いなくなるという状況に直面した時、BTSは同じようなクオリティの音楽、パフォーマンスを提供し続けることができるのだろうか。
BTSはもともと海外で(特に日本で)人気に火が付き、母国韓国でも人気になったが、その割に日本語や英語が十分でないという側面がある。それはそれで彼らの可愛さとしてもうつるが、ここから本格的にGrammy Awardなどを狙おうとするならば、メンバー全員の英語でのコミュニケーション能力は不可欠。RMも英語ができるとは言え、決してインタビューにうまく答えられているとは言えない。聞き手の質問に対し的を得た答えを返すことができない場面が多々ある。今後はしかるべきアドバイザーやTutorをつけて英語で歌い、英語のインタビューには英語で全員答えらえるようにならなければというプレッシャーはさらに高まってくるだろう。
Twitterの公式フォロワー数は2,000万台。日本のオフィシャルサイトのフォロワー数は700万台。重複している数字もあるだろうが単純に考えても1/3のフォロワーは日本人ともいえる。そして、彼らの人気に陰りが出た時、ずっと支えるのも日本のArmyたちとも言えるだろう。ジェジュンや東方神起がいい例である。彼らは母国では数千人のホールを埋めることも難しいのに、日本では2018年には128万人を動員した。もし、BTSが息の長いグループとして今後も活躍するのであれば、日本語もきちんと勉強してもっとコミュニケーションをとれるようにならなければならない。
投資家の立場で考えれば、彼らの海外戦略はまだまだ脆弱。また、Marketingとしての観点からも、彼らの販売戦略はどこか内向きなままである。彼らに対する海外の批判の多くは男なのに過剰なまでの白塗りメークアップ、韓国語の歌、物まね...などなど。しかるべきプロのアドバイザーをつけて戦略的に発信すれば更なる飛躍が待っているはず。
しかし、その時、果たしてBTSのメンバー自身がそれに耐えらえるかという問題がでてくる。彼ら自身が望まない状況の中で、管理され、世間の評価は彼らの音楽に興味がない大人たちによって支配され、結果、彼が自分自身を失わないか、それが心配。
練習生のころから共同生活を続けてきた彼らだが、それぞれ独立し高級マンションで暮らしているのでは、という記事があった。それは成長とともに当然のことだが、これまで一緒に暮らしてきたからこそ理解しあえたメンバーの心のうちや、解決してきた様々な問題も、独立して暮らすことで自我が芽生え、方向性が違ってくる、という問題が噴出してくるかもしれない。
また、Bighitの上場に伴い、その稼ぎ頭であるBTSのメンバーも大株主の一人に名を連ねる可能性もある。今回の上場話は2,000億円規模(2兆ウォン)規模とも言われている。一般企業でもあるが、ボーナスの半分を株で受け取るという方法もある。今後、BTSも給与の一部を株で支払われ、株主になった場合、また、自らも投資家になった場合、彼らは巨万の富を手にすることになるだろう。果たして、巨万の富を手にした時、彼らは同じように1日12-5時間もの練習を重ね、さらに高みを目指して頑張れるのか。
人間は目標があるから頑張れる。その頂きに到達するために努力して、耐えて、たどり着くのだ。名声もお金も全て手にした時、果たして彼らは次なる人生の目標をもって走り続けられるのか。
K-POP業界ではアイドルの寿命は7年といわれている。そんな中にあって、BTSは神話のように息の長いアイドルを目指している。だから更なる7年の契約更新を交わした。
これからメンバーそれぞれが約2年という兵役が待っている。
今年27歳になるJinは招集されればいつでもと言っているが、兵役までの残り時間は後1年。来年には入隊しなければならないだろう。その後すぐにSugaが続き、2022年までにはJ-Hope、2023年までにはRM, 2024年までにはVとJimin、2026年までにはJungkookが入隊しなければならない。Jungkookの除隊を待って全員が揃うのは2028年になる。Bighitの稼ぎかしらのBTSが全員メンバーがそろって活躍するまで7年間待つことは不可能だろう。もちろん、想定内のことで、アイドルの兵役義務に関しては所属事務所に対策を講じているだろう。
その間に世の中は変化し、音楽やダンスも時代とともに変化する。次々と新しいアイドルが出てくる中で、今の絶頂期のような人気を維持し続けられるだろうか。Bighitが上場すれば、BTSだけに注力を注ぐことはできない。次から次へと新しいアイドルを発掘し続けなければならないという投資家からのプレッシャーを受けることになるだろう。
しかし、BTSが本物のアーティストである限り、彼らの人気、存在は永遠に続くはず。ローリングストーンズだって70歳を過ぎても未だに健在である。時代が変わって彼らが発信する音楽もダンスも変わるかもしれない。しかし、彼ら自身が最高のパフォーマンスを提供し続ければ、必ず結果はついてくるはず。