総評:81点(ポスターかっこいい指数90%)

原題    THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI
製作年    2017年
製作国    イギリス=アメリカ
配給    20世紀フォックス映画
上映時間    116分

(あらすじ)ミズーリ州の寂れた道路に掲示された巨大な3枚の広告看板。そこには警察への批判メッセージが書かれていた。設置したのは、7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。犯人は一向に捕まらず、何の進展もない捜査状況に腹を立て、警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)にケンカを売ったのだ。署長を敬愛する部下(サム・ロックウェル)や町の人々に脅されても、ミルドレッドは一歩も引かない。その日を境に、次々と不穏な事件が起こり始め、事態は予想外の方向へと向かっていく……(以上MovieWalkerより抜粋)

 

どんな映画か説明することが非常に難しい映画ではありますが、鑑賞から数日経って自分なりにしっくりくる表現を思い付きました。2004年のアカデミー作品賞映画、ポール・ハギス監督の『クラッシュ』、あれをクリント・イーストウッドが内容をよりハードにして撮った感じというのはどうでしょう。

 

本作の監督マーティン・マクドナーには大変失礼な例えですが、よくよく思い出すと『クラッシュ』も、複数主観のオムニバス映画であるところや、差別を踏まえた現実社会を切り取った作品であるところ。矛盾を抱えた人間たちが主観人物であること。1つの事件に向けて物事が収束するところなど、文章で表現すればするほど近いものがあるような気がしますね。鑑賞済みの方はお判りでしょうが、画の雰囲気や演出もだいぶ異なるので実際はそんなには似ていませんが、「あの手」の映画であるというところは間違いありません。

 

各方面で絶賛されている通り、本作は脚本、演技、撮影、音楽(選曲)と、どこをとってもケチつけようがない、素晴らしく完成度の高い作品です。ただ、決して親切な話運びや結末ではないため、各映画サイトに投稿されているレビューを読むと「不安を覚える映画」であるとか「後味が悪い」と受け取った方も少なくないようです。

 

監督自身がインタビューで答えている通り、この映画は人間と人間の関係性における「希望」を描いている映画です。重く、不幸な出来事ばかり連続して起こるストーリーですが、ラストの車中でのやり取りから逆算するように思い返すと、署長(ウッディ・ハレルソン)の遺書の内容であるとか、ミルドレッド(フランシス・マクド―マンド)の別れた旦那の現恋人のキャラクターであるとか、広告屋のお兄ちゃん(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が病室で差し出すオレンジジュースだとか、レストランでのミルドレッドの、握りしめたワインボトルの処遇であるとか(笑)、今作のストーリーは、状況が一寸先は真っ暗闇へ転落しそうになるたびに、いちいち「救済」され、破滅を免れるところに特徴があります。つまり、このことこそ、監督が意図したテーマと捉えるべきでしょう。絶望の淵で、希望をもたらすものは何か、と。

 

となると物議を醸すラストに関してもですね、「良い方向」に受け取って差し支えないと思います。もちろん「こう受け取らないのは間違っている」なんて言うつもりはありませんが、僕が観た限りでは、「彼女は思いとどまる」ようにしか思えませんでした。ミズーリから目的地のアイダホまで、陸路で2000km近くあります。あのポンコツで行くなら2日は要するでしょう。ゆっくり考える時間はたくさんあります。同乗しているディクソン(サム・ロックウェル)の半身の火傷跡を見るたびに、彼女は本来の自分を取り戻していけるはずです。

 

↓監督の過去作。凝った脚本という点では本作にも通じるものがあります。