口銭(こうせん)とは? 意味や使い方 - コトバンク


① 江戸時代問屋仲買が生産者や荷主から徴収する手数料をいう。運送料保管料仲介手数料、資本利子、危険負担に対する報酬の意味をもつ。「くちせん」「くちぜに」とも称した。
※俳諧・鷹筑波(1638)五「思ひのままにとるは口銭 国を治め本意達(たつす)る陶朱公〈還跡〉」
② 売買のなかだちをした手数料。コミッション
いろは新聞‐明治一五年(1882)一月一七日「外国館へ断りて一切此口銭を出さぬ訳に議定して」
③ 人数に応じて課せられる税金。口前(くちまえ)。〔漢書‐貢禹伝〕

口銭は「こうせん」という読み方の他に、「くちぜに」または「くちせん」という呼び方もされています。

口銭は江戸時代に発展した商業利潤のことで、辿っていくと問丸の問銭や問丸得分などが起源だと言われています。

問丸とは、鎌倉時代や室町時代に港など交通の要地となっている場所に拠点を置き、物資の保管や運搬、販売などをしていた業者のことです。

そもそも問丸は、平安時代に年貢の輸送を主に行っていました。

それが、鎌倉時代の末期から一般の商品も扱い始めたことから、職業の一つとして変化したという経緯があります。

さらに、江戸時代に入って問丸が「問屋」と呼ばれるようになると、問銭や問丸得分も「口銭」と呼ばれるようになりました。

口銭には、商品の運賃や保管料の他に仲介手数料なども含まれます。

また、当時は、銀で納めると口銀、米で納める際は口米という呼び方もされています。

現代においても口銭は存在しており、商品売買の紹介やサービスの仲介をしたときの手数料(謝礼)に当たるものです。

特に商社の場合には、ビジネスの仕組み上、口銭が欠かせません。

商社では、仕入れた商品を一般ユーザーに売る際に載せる価格を「外口銭」といい、メーカーとあらかじめ取り決めのある価格を「内口銭」といいます。

つまり、口銭は古い時代の言葉がそのまま使われているもので、商品売買の仲介を委託する場合や購入者の紹介を受けたときに支払うお金のことなのです。


口銭を渡す場合には、事前に取り決め(条件など)しておくことが必要だと思います。

基本的にはその条件などを契約書に落とし込むのですが、口銭契約については口頭でも成立してしまいます。

これは契約全般に言えることですが、例えば「Aの商品を売ったら○円支払う」と伝えておくだけで口銭契約を結んだことになるのです。

しかし、口約束だけではお互い認識のズレが生じてしまいますよね。

時間の経過とともに記憶が曖昧になって、本来取り交わした条件と違ってしまうこともあるでしょう。

中には、そもそも約束したことすら忘れてしまう人がいるかもしれません。

または、約束などしていない筈なのに「購入者を紹介したから約束の10万円を支払え!」などといったトラブルに発展するのも困ります。

このようなトラブルを防止する為に、書面で契約書を取り交わしておくのです。

口銭契約を結ぶということは、商品の売買を委託することになるため、具体的には業務委託契約書を用います。

業務委託契約書は、それぞれの業務内容に合わせて作成するのですが、特に決められた書式というものはありません。

業務を委託する側と受託する側できちんと取り決めを行い、その通りに実行されるための契約書です。

決められた書式はないものの、ネット上で雛形を提供しているサイトもあるので、参考にするのも良いかもしれません。

自社サービスの内容に合った雛形を活用し、そこから必要な箇所をカスタマイズして作成すると簡単に契約書が出来上がると思います。


マージンとの違い

マージンとは、「手数料」または「利ざや」という意味を持つ言葉です。

流通業界では、仕入れの原価と販売額の差額のことをマージンといいます。

製造業界の場合は、売上高から製造にかかった原価を差し引いたものがマージンに当たります。

「代理店マージン」という言葉はビジネス界隈で一般的なので、聞いたことがある人は多いと思います。

利ざやには、販売する上でかかる全ての経費が含まれています。

例えば、運搬費や人件費、管理費、営業費などがそれに当たります。

これらを差し引いて残った部分が営業利益となりますが、口銭は販売する上でかかる経費と考えることができます。



手数料との違い

手数料とは、他者からの求めに応じた際の報酬を意味します。

商品の仲介や代理手続きをしたときに発生する金銭のことを「手数料」と言うこともありますが、例えば、何らかのサービスを利用する際の手続きや窓口業務で発生する金銭も手数料と言います。

仲介などに対して授受される金銭であることから、手数料と口銭は同じだと考えて良いでしょう。






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