緩和ケア医師 関本さん 45歳の死 自ら喪主挨拶動画 再生200万回 | アクティブエイジング アンチエイジング

[45歳の死、生きざまに反響 別れの動画再生200万回 
           緩和ケア医関本さんの言葉に「励まされた」]

(神戸新聞NEXT  2022/9/10)


緩和ケア医としてがん患者約千人を看取り、自らもがんのため今年4月に
45歳で亡くなった関本剛さん。
生前に収録し、自身の葬儀で上映した「別れのあいさつ」の動画が
注目を集めている。
遺族の了承を得てユーチューブの神戸新聞チャンネルに掲載すると、
半月ほどで再生回数が200万回を超え、高評価も3万に達した。「
励まされた」「希望をもらった」-。
コメント欄には感謝の声があふれている。
(津谷治英)


関本剛さんは神戸市東灘区出身で関西医大卒業後、病院勤務を経て
2018年、母雅子さん(72)が開業した緩和ケア専門の関本クリニック
(同市灘区)院長となった。
翌19年に末期肺がんと脳転移が見つかり、抗がん剤治療を受けながら、
亡くなる1カ月前まで患者の診療を続けた。

動画は病状が落ち着いていた2年前に収録され、遺言通り通夜、葬儀で
流された。

今年8月には、母校の六甲学院中学・高校(同市灘区)で同窓生らが開いた
お別れ会でも大画面で紹介された。

「いささか短い人生ではありましたけれども…」。
動画の中で、剛さんは話し始める。自らの死を念頭に置きながら湿っぽさは
なく、カメラを見つめる瞳も言葉も落ち着いている。

家族や友人に恵まれ、目標にしていた仕事に従事した生涯を「最高の人生」と
振り返った。
妻と子を残していくことだけが気がかりと明かし、「よろしくお願いします」
と頭を下げた。

一方で「あの世に行って、先に逝かれた先輩たちとおそらく宴会三昧の
日々だと思う」と視聴者を和ませる配慮も。
「後から来られる皆様のために、いいお店・いいお酒を手配してお待ちして
おります。そんな日が、少しでも遅くなりますことを」。
笑顔で手を振り、別れを告げた。


再生回数は9月10日正午時点で216万回を突破。
視聴者は中高年の女性が多いとみられ、コメントも830件以上が
寄せられた。
「死に直面していながら、この冷静さと穏やかさ、さすが緩和ケアの先生」
「全く存じあげない方なのに涙が止まりません。生を無駄にしてはいけない
と、勇気をいただきました」

励まされたという医療従事者も。
「看護師です。今まで患者様のために走ってきた人生だと思います。
私も先生の分までこれからも頑張っていきます」


末期がん患者からの言葉はひときわ重い。
「緩和ケアが始まるところです。…いかに生き切るかが良き死を迎えること
だとしたら、この方の生は誠にそういうものだったのでしょう。
うらやましくも希望であります」


母の雅子さんも反響の大きさに驚いた様子で、次のようなコメントを寄せた。
「剛のメッセージがお役に立てているのを喜んでいます。将来、天国で
あまりに多くの方々から声をかけていただくことになり、剛もびっくりする
ことでしょう」


■作家・福田和代さんの話 
動画が多くの方に受け入れられたのは、コロナ禍で私たちみんなが
「自分と身近な人の死」に強制的に向き合わされることになり、死について
嫌でも考えざるを得なくなったからではないか。

コロナ禍以前は平均寿命が80歳を超え、身近な人が亡くなることも
まれになり、人の死に向き合うことが減ったと言われていた。その状況が
反転し、若い知人たちからも、「万が一に備えて、残された人が困らない
ように遺書を書いた」という話をよく聞いた。

そんな時代に、関本氏のメッセージは、死は誰にも等しくいつか訪れるもので
あり、必要以上に恐れたり、悲しんだりする必要はないと気づかせてくれる。
悲愴感を抱かせない、穏やかで笑みさえ浮かべた語り口とお人柄によって、
すっと素直に心に響いたのではないか。自分の最期から目をそらさない
強さは、これからきっとさらに必要になるように思う。


https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202209/0015629008.shtml