ピロリ除菌後も胃薬PPIで胃がんリスク上昇か | アクティブエイジング アンチエイジング

[ピロリ除菌後も胃薬PPIで胃がんリスク上昇か]

(HealthDay News  2017年10月31日)


胃がんの原因として知られているヘリコバクター・ピロリ菌を除菌した後で
あっても、胃痛や胸焼けの治療に用いられるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を
長期的に使用すると胃がんリスクが上昇する可能性があることを示した
研究結果が「Gut」10月31日オンライン版に掲載された。

H. pyloriを除菌した6万人超のデータ解析で、PPIの使用で胃がんリスクが
約2.4倍となることが示唆されたという。


この研究は香港大学教授のWai Keung Leung氏らが実施したもの。
Leung氏らは今回、2003~2012年に香港でH. pylori除菌のためクラリスロ
マイシンを含む抗菌薬とPPIの3剤併用療法を受けた成人6万3,397人
(除菌時の年齢中央値54.7歳)のデータを解析した。
追跡期間は平均7.6年で、この間に3,271人がPPIを、2万1,729人がPPIとは作用機序の異なる胃薬であるH2受容体拮抗薬を使用していた。

追跡期間中に153人が胃がんを発症したが、全例がH. pylori陰性で慢性胃炎を
伴っていた。

解析の結果、PPIの使用で胃がんリスクが2.44倍に上昇することが示された。

一方、H2受容体拮抗薬の使用は同リスクに関連していなかった(ハザード比
0.72)。

また、PPIの使用期間が長いほど同リスクが上昇し、1年以上で5.04倍、
2年以上で6.65倍、3年以上で8.34倍になることが示された。


この研究はPPIが胃がんを発症させるという因果関係を示すものではない。
また、PPIによる胃がんリスクは相対的には高いが絶対リスクとしては低い。

しかし、PPIは逆流性食道炎や胃炎などに対して最も多く使用されている
薬剤であるため、Leung氏らは医師に対し「長期的な処方は慎重に行うべき
だ。このことはH. pyloriを除菌した患者も例外ではない」と注意を呼び掛けて
いる。


一方、米スタテン・アイランド大学病院のSherif Andrawes氏は「胃がん
リスクのわずかな増大を理由にPPIの使用を中止する必要はない」と指摘。
「PPIによる治療をしないことによる消化管の他の部位での出血やがん発症の
リスクと比べれば、PPIの副作用によるリスクの方が小さく、PPIが必要不
可欠な場合もある。例えば、バレット食道の患者の食道がん予防には胃酸を
抑制するPPIが有効だ」と説明している。
ただし、同氏らも胃酸の逆流がみられるだけの患者に対してはPPIを処方する
前に生活習慣の是正や食事の改善を促す努力をしていると話している。





http://www.healthdayjapan.com/