[電子版お薬手帳が共通フォーマットへ]
(家庭の医学 2016年12月14日)
<スマホで薬の履歴も自動記録>
2016年4月から、調剤薬局が発行する電子お薬手帳が紙のお薬手帳と同じ
ように使えることになり、急速にお薬手帳の電子化が進んでいます。
ところが、手帳同士の互換性がないことで、かえって不便になっている場合が
あるようです。
厚生労働省は、薬局で受け取った薬の名称や飲み方をスマートフォンに記録
する、電子版お薬手帳を、どの薬局でも使えるようフォーマットの標準化に
向けて検討を開始しました。
調剤薬局でもらえる紙のお薬手帳は、持参するのを忘れたり紛失したりする
人が多いため、電子化への動きが進んでいます。
スマートフォンを普段から持ち歩く人が増えてきたため、電子化に移行した
ほうが普及する可能性が高いからです。
調剤薬局が独自に開発したアプリをダウンロードすると、薬局の明細書などに
あるQRコードを読み取るだけで、薬の情報が自動的に記録できるしくみに
なっています。
ところが、調剤薬局の系列ごとにサービス内容が異なるため、違う形式の
ものと互換性がなく、お薬手帳本来の目的である服薬歴の一元化ができないと
いう問題が生じています。
そこで厚生労働省が、異なる電子版お薬手帳でもQRコードが読み取れる
よう、標準フォーマットの構築を始めたのです。
お薬手帳が生まれた背景には、複数の医療機関で処方された薬の相互作用や
重複投与による健康被害を防ぐという目的がありました。
それを薬局ごとに別のアプリで管理したのでは、お薬手帳を使う意味が
なくなってしまいます。
共通フォーマットのお薬手帳が実現すれば、利用する側も簡単に自分の薬の
情報がスマホで管理でき、複数の医療機関を受診するときも医師に自分の薬の
情報を正確に伝えることができるようになります。
また、災害時や転居でかかりつけ以外の医師の診察を受ける場合にも、スマホ
さえあれば自分が飲んできた薬の情報がすぐに引き出せるのは、とても心強い
ものです。
現在、調剤薬局チェーンが提供している電子お薬手帳には、医療機関で
受け取った処方箋を調剤薬局に送信する機能や、カレンダーとアラームで
通院日や服薬時間を管理できるような機能がプラスされているものもあり
ます。
電子お薬手帳の普及が進めば、日々の健康管理にもスマホが欠かせない時代に
なっていくかもしれません。
もちろん、従来通りの紙のお薬手帳が使えなくなるわけではありません。
スマホを使用していない人も多く、特に複数の薬を処方されることの多い
高齢者は、お薬手帳が重要な役割を果たしているためです。
共通フォーマットの完成までには、まだ数年かかる見込みですが、2016年
4月から、お薬手帳を持参すると薬局で支払う薬剤服用歴管理指導料が、
自己負担3割の人で40円ほど安くなるよう改訂されています。
お薬手帳の普及を促進するのが狙いです。
「いつもお薬手帳を忘れてしまう」という人は、紙でも電子版でもどちらでも
いいので、通院や薬局に行く際には必ず持参するよう、習慣づけましょう。
(監修:目黒西口クリニック院長 南雲久美子)
http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/124086/