胃薬で心臓発作、風邪薬で認知症 | アクティブエイジング アンチエイジング

[意外な「薬」で意外な「副作用」、
            胃薬で心臓発作、風邪薬で認知症など気にしたい]

(Medエッジ  2015年6月21日)


<ビッグデータで関連を探る新しい動きも>
意外な薬で意外な副作用が判明することがある。
一見、副作用が少ないからと、むやみに薬を使い続けるのは避けたい。



<1600万件のデータを分析>
このたび米国スタンフォード大学を中心とした研究グループから出された研究
報告は世界的に注目された研究の一つだろう(「胸やけ」の薬で心筋梗塞の
リスク2割増加、1600万件のデータの分析結果が判明を参照)。

胃薬で、胃酸の出すぎを抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる
薬で、一見、全く関係のない心筋梗塞が2割も増えると裏付けられたという
ものだ。

オンライン科学誌であるプロスワン(PLoS ONE)誌で2015年6月10日に
報告された。

「データマイニング」と呼ばれる手法で、1600万件もの大量の情報から
関連性を抽出していく研究のなかから判明した。



<心臓の血管が詰まる>
一見関係がないとはいえ、従来、危険性がある可能性をうかがわせる情報は
あったようだ。

プロトンポンプ阻害薬を使っていると、「急性冠症候群」の起きた後に問題に
なることがあったからだ。
急性冠症候群とは、心臓に血流を供給する血管である冠動脈が狭くなったり、
詰まったりする病気。
血液を固まりにくくする薬である「抗血小板薬」を使っている人で病気の
再発といったトラブルが起きやすくなると報告されていた。

さらに、心臓の健康な人でも潜在的にリスクがあるのではないかと疑われて
いた。

研究グループは大量の医療データを解析して、関連性を分析したわけだ。



<心臓や血管関係の死亡は2倍に>
結果として、胃食道逆流疾患(GERD)と呼ばれる、いわゆる「胸焼け」の
ためにプロトンポンプ阻害薬を使っている人で、心筋梗塞が1.16倍に増えて
いると判明した。

追跡調査によって生存との関係を調べると、心臓や血管の病気によって死亡
する人の割合が2倍にも高まっていることも分かった。

かねて抗血小板薬のクロピドグレルの使用と関係があると報告されていたが、
今回の分析の結果ではこのクロピドグレルという薬とは無関係に病気や病気に
よる死亡の増加は確認できた。

同じ胃薬のH2ブロッカーでは同じような問題は起きなかった。



<胃で細菌が増える報告も>
プロトンポンプ阻害薬も含めた胃薬では胃の細菌が増えるといった現象も
副作用と言えるかもしれない。

2014年8月には子どもの胃の中の細菌を増やすと報告された(胃薬が
原因で、肺や気管の病気になりやすい可能性を参照)。
胃から口へと逆流して、肺炎のような問題を起こす可能性を指摘している。

子どもを対象として検証したところ、胃酸を抑える薬を使っていると、
使わない場合よりも、胃の中で細菌が増えていると確認。
胃液の中に「ブドウ球菌」や「連鎖球菌」といった細菌が増えていた。
胃から食道への逆流が起こって、肺の細菌も増えるとも分かった。



<風邪薬も含めた薬も問題に>
今年は、ごく身近な風邪薬のような薬でアルツハイマー病をはじめ認知症の
リスクを高めるという報告も注目された(風邪や花粉症など、身近な薬が
アルツハイマー病を増やす、飲むほど影響、米国グループ報告を参照)。

抗コリン作用と呼ばれる効果を持つ薬で、総合感冒薬や鼻炎薬、胃腸薬、
一部の抗精神病薬、抗うつ薬などが関係している。
神経伝達のために体内で一般的に働いている「アセチルコリン」を邪魔する
薬だ。

65歳以上の3000人以上を平均7年以上にわたって追跡調査したところ、
10年間の期間の中で、標準的な1日の用量を91日分から365日分使っていると
危険度は1.19倍。さらに366日から1095日使った場合1.23倍、1096日を
超えると1.54倍と危険度が高まるという結果だ。

1年間のうちで9日くらい関係した薬を飲んでいる人から関係してくる
わけで、幅広い人に関係するところもあり大きく注目された。


必要な場合には薬は強力なサポートになるとはいえ、必要以上に使わない
よう、あるいは必要がないときには使わないよう心掛けると良いのだろう。

Medエッジでも薬についての好ましくない影響についての研究報告があれば
随時、取り上げていく(副作用関係の記事はこちらを参照)。



http://www.mededge.jp/spcl/14807