[花粉症の人 豆乳で口腔アレルギー 「大豆で症状なし」でも発症
「少量から摂取して」と呼び掛け]
(産経新聞 2017年2月9日)
豆乳の消費量が増える中、豆乳が原因でアレルギー症状を発症する事例が
増えている。
花粉症患者が豆乳などを摂取した際に発症する「口腔アレルギー症候群」と
みられ、専門家は「花粉症の人が初めて豆乳を飲むときは少量から摂取して」
と呼び掛けている。
(平沢裕子)
<呼吸困難にも>
東京都文京区の会社員女性(35)は先月、豆乳を飲んだ後に目がかゆくなり、
鼻水が止まらないなどの症状が出た。
「健康のために豆乳を毎日飲もう」と考え、飲み始めて3日目のことだが、
1日目と2日目にも口の中が少しイガイガする感じがしたという。
豆乳のパッケージに「他の大豆食品でアレルギー症状が出ない方でも、
ごくまれにアレルギー発症例があります」と表示があることに気付き、
飲むのをやめたところ症状がなくなった。
女性は「もともとアトピー性皮膚炎で花粉症もある。他の大豆食品は普通に
食べてきた。検査はしていないが、豆乳が原因のアレルギーだと思う」と
話す。
国民生活センターには、平成20年ごろから「豆乳を飲んでアレルギー症状が
出た」との相談が寄せられるようになった。
件数は5年間で15件と多くはないが、中にはじんましんや呼吸困難など
「アナフィラキシー」と呼ばれる症状を起こした20代女性もおり、センターは
平成25年、消費者に向けて注意喚起を行った。
<果物でも>
大豆には、大豆を原材料とした食品を食べたことにより発症する一般的な
食物アレルギーと、主にカバノキ科植物(シラカンバ、ハンノキなど)の
花粉症患者が豆乳などを摂取した際に発症する「口腔アレルギー症候群」が
あることが知られている。
国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室の福冨友馬
室長は「大豆には、カバノキ科花粉のアレルゲン(タンパク質)と似た
『Gly m(グリエム)4』と呼ばれるアレルゲンが含まれている。
豆乳を飲んでアレルギー症状が出るのはこのため」と説明する。
グリエム4は、加熱や発酵などの加工処理でタンパク質としての働きを
失いやすいという性質があり、同じ大豆加工品でも納豆やしょうゆ、みそなど
加熱・発酵した食品ではこのアレルギーはほぼ起きないが、加工度の低い
豆乳やモヤシ、枝豆、豆腐などで症状を起こすことがある。
また、カバノキ科花粉とよく似たアレルゲンは、リンゴやモモ、サクランボ、
ビワなどバラ科の果物にも含まれる。
豆乳によるアレルギーを起こした人の半数以上にこれらの果物を食べたときに
アレルギー症状が出ることが分かっている。
ただ、発症のしくみや病態など、不明な部分も多い。
<血液検査で診断>
確立した治療法はなく、原因物質を避けるのが対策の基本。
そのためには、このタイプのアレルギーかどうか調べる必要がある。
診断は、専門施設で微量の食品を皮膚に染み込ませる皮膚テストに加え、
昨年2月からグリエム4に対する血液検査が保険で可能になり、通常の
アレルギー科クリニックでも容易に調べられるようになった。
カバノキ科植物は1~5月に開花し、花粉が飛散する。
相模原病院の外来患者の調査では、この時期に豆乳などによるアレルギーの
発症が増加していた。
福冨室長は「カバノキ科の花粉症や果物アレルギーの人は、豆乳でアレルギー
が発症するリスクが高い。初めて豆乳を飲む人は、少しずつ飲んで様子を
みた方がいい。また、豆乳を飲んで症状が出た人は、アレルギー専門医の
診察を受けてほしい」と話している。
<健康ブームで消費倍増>
日本豆乳協会(東京都千代田区)によると、豆乳の出荷量は平成20年の
16万キロリットルから平成28年は31万4000キロリットルとほぼ倍増。吉
沢兄一事務局長は「健康ブームで植物性タンパク質が注目されていることや
飲みやすく味が改良されたことなどで利用者が増えている」。
同協会は、大豆の食物アレルギーがない人も豆乳でアレルギーとなる人がいる
ことをホームページに記載。
加盟企業は、豆乳製品のパッケージに「少量からの試飲を」などの表示で
注意喚起している。
http://www.sankei.com/life/news/170209/lif1702090014-n1.html