[抗生物質はNG! のどが痛む「伝染性単核球症」の見分け方は?]
(MEDLEY 2016年5月30日)
のどの痛みなど、かぜのような症状を起こす伝染性単核球症は、似た症状の
ある溶連菌感染症などと違い、抗菌薬は効かないばかりか、悪化させる原因に
なってしまいます。
身体診察などで見分ける方法が、これまでになされた研究からまとめられ
ました。
<伝染性単核球症に抗菌薬を使わないために>
伝染性単核球症の原因は、EBウイルスなどのウイルスです。
抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は細菌に対して効果がある薬ですが、ウイルス
には効きません。
しかも、伝染性単核球症にかかった人が誤ってペニシリン系抗菌薬などを
使ってしまうと、皮膚の発疹などを引き起こすことがあります。
このため、伝染性単核球症の治療のためには、症状が似ている溶連菌性咽頭炎
などと正しく見分け、抗菌薬を使わないようにすることが大切です。
ここで紹介する研究は、伝染性単核球症を身体診察などから診断するときに
手がかりになる特徴について、これまでにどんな研究がなされているかを
調べ、結果を統合したものです。
<16歳から20歳に多い>
見つかった研究データから、次の結果が得られました。
伝染性単核球症は、5歳から25歳の患者に最も多く見られた。
特に16歳から20歳に多く、16歳から20歳でのどの痛みを訴える患者のうち
およそ13人に1人が伝染性単核球にかかっていた。
伝染性単核球症は5歳から25歳、特に16歳から20歳の人に多く起こって
いました。
身体診察で次のことが見つかった場合には、伝染性単核球症の可能性が
より大きいと見られました。
・リンパ節が腫れている
・特に、首の後ろ、鼠径部(足の付け根)、脇の下のリンパ節が
腫れている
・口蓋(口の中の上あごの部分)に点状出血がある
・脾臓が腫れて大きくなっている
症状については次の結果でした。
症状の情報は伝染性単核球症の診断のためには限られた価値しかなく、のどの痛みと疲労感は感度が高いが(範囲0.81-0.83)、非特異的である。
伝染性単核球症だった人の80%ほどに、のどの痛みと疲労感の症状が出て
いましたが、ほかの病気でこの症状になることも多く、区別する決め手には
なりにくいと考えられました。
血液を顕微鏡で観察したときに、異常リンパ球が現れるなどの特徴的な異常が
出ていれば、ほかの病気の可能性はかなり小さいと見られました。
伝染性単核球症と診断された場合、EBウイルスを殺して早く治す薬はない
ので、主に安静によって自然に治るのを待つことになります。
こうした研究から正しく診断しやすくなることが、抗菌薬が有害になって
しまうことを防ぎ、正しく治療するためにとても大切なことです。
https://medley.life/news/item/5746ac65458b9203028b4ff4