[口の中が乾き、舌がピリピリ痛む ふくいのドクター相談室]
(福井新聞 2015年1月15日)
2年ほど前から、口の中が乾くようになりました。
何度か耳鼻咽喉科を受診しましたが、「異常がない」と診断されました。
処方された薬を服用しましたがよくならず、最近は口の中の粘膜が弱くなり、
舌がピリピリします。(福井市、63歳女性)
【お答えします】山田和人・福井赤十字病院歯科部長
■マスクや保湿剤で乾燥対策を
耳鼻咽喉科を受診して異常はないと言われているとのことですので、唾液の
分泌の低下はありそうですが、全く出ていないような状態には至っていないと
考えます。
通常、唾液は1日に1.5リットル程度出ていますが、加齢とともに減って
いきます。
絶えず一定量が出ているのではなく、日中は多く、夜間は減ります。
また、加齢に伴い呼吸機能も低下し、本来は鼻でするべき呼吸を、口で行う
ようになります。
口は食べるための部位で、鼻のように吸い込んだ空気の加湿を行う部位では
ないため、口で息をするとすぐに乾燥します。
皮膚は15~20層の厚い上皮からなり、乾燥に強くできていますが、口の
粘膜は5~6層と薄く、上皮の下にある血管の色が透けて赤く見えます。
口の粘膜はぬれた状態で正常な機能を果たしており、乾燥には非常に弱く、
容易に傷つき炎症を起こします。
対策としては、マスクなどで乾いた空気を口から吸いこまないことです。
最近では、湿らせたガーゼなどをマスク内に入れられる商品も市販されて
います。
唾液の分泌を補う口腔内保湿剤を塗るなどの方法も有効です。
また、一部の薬には唾液の分泌を低下させる副作用があります。
現在、服用している薬があれば、処方した医師に相談して、副作用の可能性が
ある場合は他の薬に変えて様子をみるのも良い方法であろうと考えます。
■舌の痛みは病気の可能性も
舌にピリピリする痛みがあるとのことですが、乾燥による傷ばかりでなく、
さまざまな原因が考えられます。
中には、いろいろな検査を行っても異常が認められず、ピリピリする痛みの
症状だけが10年単位で続く「舌痛症」と呼ばれる疾患もあります。
この疾患は、強い緊張状態が続いた時などに脳が小さな違和感を痛みとして
感じとり、その痛みを記憶することで同じような緊張状態になると再び痛みと
して現れるのではないかと考えられています。
一部の漢方薬、抗うつ剤、精神安定剤で、誤った痛みの記憶をキャンセルし、
治すことができます。
まずはかかりつけの歯科で相談して、明らかな病変がないようであれば、
口の乾燥の対症療法を試してください。
それでも変化なければ、近くの歯科口腔外科を紹介してもらうと良いと
考えます。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/medicaldoctor/61968.html