[5年以内死亡率は30% がんより怖い「下肢閉塞性動脈硬化症」]
(日刊ゲンダイ 2013年12月2日)
Aさん(59)は、50代半ばから足の冷えが悩みだった。
触るとひんやりしている。
冬は事前に布団をコタツなどで温めておかないと、足が冷えてよく眠れな
かった。
そのうち、数百メートル歩くと足が痛んで歩けなくなってきた。
休むと痛みが取れるが、数百メートル歩くとまた痛む。
近所の整形外科を受診したが、レントゲンを撮っても異常が見つから
なかった。
そんなAさんが脳梗塞を起こしたのは、昨年のことだ。
幸い命は助かったが、半身不随の後遺症が残ってしまった。
よくある症状と思いがちだが、「足の冷え」は絶対に放置してはいけない。
Aさんの二の舞いになりかねない。
東邦大学医療センター大橋病院循環器内科・中村正人教授が言う。
「下肢閉塞性動脈硬化症の可能性があります。米国のデータになりますが、
発症5年後の心筋梗塞や脳卒中などの血管障害で亡くなる方は30%にのぼり、
数%は下肢の切断に至るといわれています」
ある種のがんと比べると、「がんよりも怖い病気」が下肢閉塞性動脈硬化症
なのだ。
中村教授に詳しく聞いた。
<「足の冷えくらいで・・・」と甘く見ると・・・>
血管に脂肪やコレステロールが蓄積し、血液の通り道が狭くなる動脈硬化は、
全身の血管に起こる。
下肢閉塞性動脈硬化症は、全身の動脈硬化のうち、最も心筋梗塞や脳卒中を
起こしやすく、死に直結しやすい動脈硬化だと考えられている。
「下肢の血流が悪くなり、酸素や栄養が十分に運ばれなくなります。すると、
足が冷えてきます。顔色ならぬ“足色”が、健康的な色ではなくなります。
間欠性跛行といって、200~300メートル歩くと足が痛くなって歩けなく
なる。休むとまた歩けます。さらに進行すると、足先に栄養が運ばれなく
なり、深爪した、水虫ができた、といったちょっとしたことでできた傷が
治らず、切断に至る場合もあるのです」
自分で活動範囲を制限してしまうため、自覚症状はそう強く出ないことが
まれではない。
下肢閉塞性動脈硬化症と診断された患者は口をそろえて「そういえば・・・」
と言う。
早期発見につながるサインを決して見逃してはいけない。
下肢閉塞性動脈硬化症は
(1)50歳以上
(2)喫煙者
(3)高血圧
(4)糖尿病
(5)脂質異常症
(6)肥満
のうち該当する項目が多いほどリスクが高い。
「冷えくらいでは患者さんはなかなか検査を受けに病院に来ない。そのため
知らないうちに症状が進行してしまっている人が多いのです」
下肢閉塞性動脈硬化症の病期は4つに分けられる。
Ⅰ度は「冷えやしびれを感じる」
II度は「ある一定の距離を歩くと痛くて歩けなくなる。休むとまた歩ける」
III度は「安静時も痛みが生じる。特に夜間に多い」
Ⅳ度は「皮膚がじくじくする。足が変色している」
せめて、II度までには受診すべきだ。
「III度やⅣ度になると、治療に時間を要し、下肢閉塞性動脈硬化症の治療を
多数行っている医療機関を受診しても、下肢切断に至る場合があります」
冒頭のAさんのように、整形外科の疾患だと思い、下肢閉塞性動脈硬化症発
見のチャンスを逃してしまうこともある。
発症リスクを上げる6つの項目のうち、特に(2)~(6)のどれか1つでも
覚えがあれば、循環器内科も受診した方がいい。
http://gendai.net/articles/view/life/146369