[陽子線がん治療患者が大幅増 県立病院、著名人の体験談効果]
(福井新聞 2013年9月4日)
福井市にある福井県立病院陽子線がん治療センターの患者受け入れ数が昨秋
以降、大幅に伸びている。
県によると、作詞家で直木賞作家のなかにし礼さん(75)が昨秋、陽子線
治療で食道がんを克服したことが各メディアに取り上げられ、全国的に
同治療に注目が集まったのが要因の1つという。
センターには来春、より高精度の照射ができる「積層原体照射システム」が
導入される予定で、関係者は「福井で最先端の治療が受けられるという
ことで、さらに関心が高まれば」と期待している。
食道がんを患ったなかにしさんは、心臓の持病のため手術に耐えられないと
して、切らずに治す陽子線治療を選択。国立がん研究センター東病院
(千葉県)で治療を受け、約半年で復帰した。
その様子がテレビや雑誌などで紹介され「なかにしさんの体験談で認知度は
一気に高まった」(県地域医療課)。
県立病院陽子線がん治療センターは2010年3月に治療開始。
治療患者数は毎月一桁から10人台で推移していたが、“なかにし効果”により
昨年10月以降は平均20人以上に急増した。
陽子線治療を受けられる施設は全国で数えるほどしかなく、関西圏や中京圏、
北陸から治療に訪れるケースが多い。
一昨年度は115人、昨年度は152人だったが、本年度は7月末現在で既に
101人(県内32人、県外69人)を受け入れた。
同センターはさらなる治療水準の向上を目指し、がんの形状に合わせた精度の
高い治療ができる積層原体照射システムを来年3月ごろ導入する予定だ。
同システムは、特殊なフィルターなどを通すことで陽子線を複数の層に分けて
照射できるのが特徴。
がん病巣周囲の細胞への放射線の影響をより少なく抑えることができるほか、
複雑な形状をしたがんの治療も高い精度で行うことが可能になる。
同システムと同時に、CT自動位置決めシステムも導入する。
陽子線治療の照射位置を決める際、従来のX線画像では難しかった血管や
末梢神経など軟部組織の描出がしやすく、より精度の高い位置合わせができる
ようになる。
山本和高センター長は「新システムの導入で今までよりも副作用が少なく、
治療成果が高まる可能性は高い」と期待を込める。
また、同センターは陽子線治療の認知度を高めるため、PRのための出前講座を
行っている。
数十人の希望者を対象に、治療の仕組みやセンターの概要を解説する。
山本センター長は「がん治療の選択肢の1つに陽子線治療があることをもっと
多くの患者に知ってほしい」と話している。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/45295.html