ミトコンドリア:父性は細胞内自食で分解 母性遺伝解明 | アクティブエイジング アンチエイジング
[ミトコンドリア:父性は細胞内自食で分解 母性遺伝解明]

(毎日新聞  2011年10月14日)


細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアの遺伝子が母親だけから子に
受け継がれるのは、精子由来の父性ミトコンドリアが「オートファジー」
(自食作用)と呼ぶ現象によって細胞内で分解されるためだとする研究結果を
群馬大の佐藤健教授と妻の美由紀助教(ともに細胞生物学)夫妻がまとめ、
14日、米科学誌「サイエンス」(電子版)に発表した。


人類の進化に関する学説として、ミトコンドリア遺伝子から祖先をたどると
数十万年前のアフリカの女性に行き着くという「ミトコンドリア・イブ説」が
知られている。

しかし、ミトコンドリアの母性遺伝の仕組みは解明されていなかった。


佐藤教授によると、実験には、土の中に生息する体長約1ミリの透明な生物
「線虫」を使った。
細胞機能がヒトと同じためで、正常な線虫の受精卵と、遺伝子操作で
オートファジー機能を持たないようにした線虫(欠損線虫)の受精卵を
比べた。
その結果、欠損線虫からは父性ミトコンドリアが検出された。

オートファジーは、細胞が飢餓状態になった時に細胞内の一部を分解して
栄養源にする機能を持つ。
佐藤教授らは、正常な受精卵ではオートファジーによって父性ミトコンドリア
が「食われて除去された」と結論づけた。

ただ、なぜ除去されるのか、理由は分かっていない。

佐藤教授は「父性ミトコンドリアは受精に至る過程で多くのエネルギーを使い
疲弊している。そうした遺伝子を次世代につなげないように除去している
可能性が考えられる」と話している。


【鳥井真平】



http://mainichi.jp/select/science/news/20111014k0000e040014000c.html