[コラーゲン回復で弾力増 肌が若返るケミカルピーリング]
(朝日新聞 2012年5月15日)
酸を塗って古い皮膚をはがし皮膚の若返りをはかる「ケミカルピーリング」。
気にはなっても、試すのはちょっとこわいような気もします。
どれくらいの効果があり、どんな注意点があるのでしょう。
「ピーリングは、皮膚の自然の治癒力を応用した再生治療です」
和歌山県立医科大でピーリング外来を担当する山本有紀准教授(皮膚科)は
そう話す。
医師による治療では、その日の肌の状態を見極めて、グリコール酸やサリチル
酸といった薬液を塗り、数分後に落とす。
すると古い皮膚の一部がはがれ、しばらくして新しい皮膚が再生。
これを繰り返すことで、ニキビやシミ、くすみ、ちりめんジワなどが改善
する。
通常は2~4週間に1回ずつ。
例えばニキビなら計5回ほどで一定の効果が見込まれるという。
深すぎないニキビの痕も改善できるが、3~4年かかることもある。
ピーリングは、酸の種類や濃度、酸性の度合い、薬を使う時間の長さで深さが
変わり、深いほど皮膚の再生効果が見込まれる。
ただその分、炎症やかさぶたなどの反応も激しくなる。
アジア人は、ピーリング後のシミが白人よりできやすい。
「だから、深い治療は慎重に行う必要があります」と、学会ガイドラインの
執筆者でもある山本さん。
美容が目的なら、日本では、深くても表皮までにとどめるのがふつうだと
いう。
浅い刺激であっても、皮膚の奥の細胞や組織は活性化するらしい。
紫外線と皮膚の老化に詳しい日本医科大の船坂陽子准教授(皮膚科)は
「表皮へのピーリングだけでも、奥にあるコラーゲンなどが回復し、肌の
弾力が増します」と話す。
美容目的だと保険はきかず、大学病院でも1回あたり1万5千円前後する。
「そんなに高いのは無理」という人には、数百円から数千円程度の市販品を
使ったセルフケアもある。
治療用と違い、酸の濃度はごくごく低め。
そのため、治療のような再生効果は期待できないが、肌の刺激にはなる。
商品の説明書をよく読み、使う時間や量、頻度を守る。それがセルフケアの
大原則だ。
ほかの化粧品の「美白成分」と重なったり、ニキビ治療薬のアダパレンを併用
したりすると、肌への刺激が強く出過ぎることがあるので要注意。
赤みや痛みなどが3日以上続けば皮膚科を受診したほうがいい。
ピーリング後は、肌本来のバリアーが壊された状態。
このため肌がかさついたりしやすい。
「保湿と日焼け対策は入念に」と医師たちは強調する。
国民生活センターには、市販品で「シミになった」「ヒリヒリして眠れない」
などの相談が絶えないという。
「宣伝にひかれて、注意点を理解せずに使ったりしている例もあるようです」
と、商品テスト部の担当者は話す。
(権敬淑)
<インフォメーション>
ケミカルピーリングはレーザー脱毛などと同様、法的には患者の体に負担が
かかる「医療行為」だ。
原則として医師か、医師の指示がないと治療できない。
もし、美容エステでピーリングを勧められたら、医師の指示があるのか、
万が一の肌トラブルにはどう対処してもらえるのか、事前に確認をしたほうが
いい。
http://www.asahi.com/health/hiketsu/TKY201205140145.html