正直に言えば、一度だけ原付バイクを友達に貸して

峠を攻めるという行為をした事があります。高校時代

でした。相手は無免許ではありませんでした、学校に

は黙って原付一種だけ取得していた友達でした。


 幸い、本当に幸い、その頃僕は相当下手で、まあ

峠を攻めるとかバカの一つ覚えでテクニックは全く関

係なく、暴走行為自体違法なのでダメですが、


 今でも連れがもし事故に遭ってしまったら?!


 死んだら!?


 気が気ではなかった。


 未成年で、人生の選択に唯一失敗した時間でした。


 途轍もその時間は長く、もう後悔の言葉ばかりを

繰り返し繰り返し怒鳴って地面に向かって当たり散ら

して怒鳴ってました。


「なんで貸したんだろう!?」


 この時、初めて人の命の重さを痛感しました。


 やっちゃいけない、越えちゃいけない線があって、


 それは未成年だろうが成人していようが、


 行けないラインだって事を。


 後悔したって遅い。


 でも運が良ければ…どんなにその苦しみから逃れる

事を望んだでしょうか?


 死ななくて、怪我なくて本当に着いていたと思いま

す。と同時に、


「バイククルマは人に貸しちゃうダメな物なんだ」


 18歳でした、僕が。


 その後、友達に文句も言えず、返して貰った時も、

強がっていました。


「速いね」


 NS50Fでした、当時乗っていたのは。何にも楽しく

も嬉しくも無い、帰りも気分が物凄く落ち込んでしま

い、とにかく生きていた皆んなが楽しく別れて帰路に

着いた事だけが、


 本当に救いだった。


 そして。


 去年、とある場所で、高校生がバイクを貸して、

しかも無免許の奴に知っていてバイクを貸してしまい、


 二人乗りで、2人共に対向車と事故を起こして死ん

でしまった痛ましい事故のニュースが流れていました。


 おそらく。


 貸した側は未成年であろうから、不起訴でしかし

現在成人していれば(18歳)かなり重い刑事罰を受ける

事になるだろう…が、それよりもだ、


 最も辛いのは死んだ二人の両親の、残された想い。


 たぶん、貸した奴と死んだ二人は仲良しだった事

だろう。互いの両親もある程度は親交があったかも知

れない。


 当然だが、貸した連れは親に連れられ、死んだ事へ

の謝りの為に二人の残された両親の元へ頭を下げに行

ったのではなかろうか?


 ひょっとしたら、死んだ二人の両親は、精一杯堪え

てその場は許してくれたか、


 怒り狂って貸したバイクの奴掴み掛かる位に怒りを

ぶち撒け当たり散らしたかも知れない。


 もし、一見して優しく許してくれた様に見えても、

 お前は安心しては行けないぞ?


 絶対に死んだ二人の両親は、とても出来た方々だろ

うが、


「おまえがバイクを貸しさえしなければ!!!

 死なずに済んだのに!!」


 ぜったい、間違いなくそう思って息子の遺体の前で

辛い辛い、そして遺骨になった今でも後悔して悔やん

でいる事だろう。


 言いたいのは、


 どんな健康な奴でも未成年だが元気は大人顔負けの

中学生でも高校生でもな、


 15km/h以上の速度で走るバイクからヘルメットも

被らずにアスファルトに頭を打ちつけると、


 死ぬんだよ。


 頭じゃなくても首でも捻ったら、


 死ぬんだよ。


 対向車に轢かれても跳ねられてもな、


 死ぬんだよ。相手は鉄の塊だから、バイクに乗った

生身の人間はグッチャグッチャになって内蔵が破裂し

腸や肝臓や肺が飛び出して、

 頭蓋が割れて、目が飛び出し、脳髄が飛び散って、


 死ぬんだよ。


 どんな健康な奴でも、アスファルトの硬さと鉄の塊

に速度が乗ったままぶつかれば、


 身体は直ぐに弾けて霧散する。


 いいか、バイクやクルマは、如何に任意保険を掛け

てあったとしても、


 友達に貸してはならない。


 賢くなれ。


 最悪を考えて、慎重になるべき時には勘と状況把握

に感性を研ぎ澄ませて事にあたれ。


 いっときの油断こそが友達をも殺してしまう。


 それが交通事故だ。


 死んでからじゃ、身体の機能を失ってからじゃ遅い

んだ。


 絶対に取り返せない過ちが、貸すという断るだけで

その後は人生が開けるのだ。


 貸すな、絶対に貸すな。2度と言わない。