「ザ・バニシング ~消失~」… | 道化工房準備室

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ザ・バニシング-消失- [DVD]

ある日突然、恋人が忽然と姿を消す。
そして彼女の行方を知るという男が現れ…

1988年にオランダで公開され、その衝撃的なストーリーから
ジョルジュ・シュルイツアー監督がアメリカに招聘され
リメイクが制作されたサスペンス映画である。

僕がこの映画を知ったのは、ジョン・カーペンターをはじめとする
ホラー映画作家をフィーチャリングしたムック本で、
すでにジェフ・ブリッジス、キーファー「24」サザーランド主演でリメイクされた
「失踪」が公開された後であった。
以下、おもいっきりネタバレありw

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車で旅行中のカップル(レックスとサスキア)が些細なことから
喧嘩をするところからストーリーは始まる。
日常よく経験する、ごく普通のことである。
二人は仲直りをし、とあるサービスエリアに立ち寄る。

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二度と独りにしないと誓い合った矢先、ジュースを買いにいったまま
サスキアは行方不明になる。
レックスは目撃者の話から男と消えたことを知る。
そして捜索願を出し3年が過ぎた…

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そこに彼女の消息を知っているという男が現れる。
大学教授で、妻と二人の娘と暮らすごく普通の家庭的な男であった。

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男は自分がサスキアを連れ去った犯人であることをにおわせつつ、
自らの生活と自分の限界に対する押さえがたい好奇心と衝動をレックスに語る。

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男はレックスに「彼女がどうなったかを知りたければ、
このコーヒーを飲め」と勧める。
レックスは男を警察に突き出すことも可能ではあるが、
男がどんな罪を犯したのか証拠がなく、
しかもその時点でサスキアがどうなったかを知ることが出来なくなるという
ジレンマに陥る。
そして何よりも「サスキアがどうなったのか?」という恋人を愛するがゆえに
どうなったか知りたいという押さえがたい欲求と好奇心。
コーヒーを飲めば自分自身の破滅を予期しつつ、レックスはカップを手に取る。

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意識を失っていたレックスが目覚めたところは…

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庭で家族とくつろぐ男。
自家用車の後部座席には
「失踪した恋人を探していた男、行方不明」と書かれた新聞が…

全ては押さえがたい好奇心と衝動、
そして複雑に絡み合った偶然が呼ぶ不幸である。
男は川でおぼれかけている子供を助けたかと思えば、
「自分は人を殺せるか」という好奇心から殺人を計画する。
だがことごとく失敗に終わっていたところに偶然現れたサスキア。
そして計画にはない出任せからサスキアの誘拐に成功する。
偶然であることが引っかかっていたのか、
レックスの好奇心に気づき、巧みに誘い今度こそ計画を成功させる。

この映画の怖いところは、犯人の動機が知性をひけらかすことや、
神に代わって「天の裁き」などではなく、実際にある失踪事件や
「誰でもよかった」という理不尽な殺人を描いているところで、
とくに自分が明日巻き込まれてもおかしくない物語なのである。

そしてヨーロッパ映画らしく、淡々とそしてジワジワと物語が進んでいく。
後味が悪いとよく言われるが、時間の短い「ヒッチコック劇場」などでは
よくある終わり方である。
それよりも失踪直前のサスキアの笑顔がとても可愛らしく、
その後、彼女に訪れる絶望を思うと非常に切ない。

よほどの衝撃だったのか、リメイク以外にも
カート・ラッセル主演で「ブレーキ・ダウン」という亜流映画も公開された。

この映画は1988年に制作されている。「羊たちの沈黙」「セブン」などよりも
ずっと前に公開されたサイコスリラーの傑作なのである。
その証拠にクライテリオンでもソフト化されているw

残念ながらDVDは廃盤になっていて
レンタルでもなかなか見つからない。
僕はDVDを手に入れたが、
このご時世、いろんな方法で見ることができる。
是非ご覧いただきたい傑作である。

恐るべきは誰もが持つ「心の闇の奥」なのである。



「人間はときに悪魔にも聖人にもなるんだ」
~ John Carpenter (ジョン・カーペンター)~