【衝撃事件の核心】「脱法ドラッグ」実は「麻薬」、規制強化で過 | atlanticaのブログ

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【衝撃事件の核心】「脱法ドラッグ」実は「麻薬」、規制強化で過激化する市場

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 脱法ドラッグとして販売されていたのは、違法薬物そのものだった-。業界内で、脱法ドラッグの製造・販売の最大手として知られる東京都内の製薬会社が平成25年11~12月、警視庁に麻薬取締法違反容疑などで摘発された。押収された薬物からは合法の成分も検出され、違法薬物と合法薬物が混ざり合い脱法ドラッグとして販売されていたことが判明した。違法薬物への「入り口」とされる脱法ドラッグは規制強化で違法薬物との境目が曖昧になり、覚醒剤に限りなく近い薬物が出回るなど、過激化が進んでいる。(荒船清太)

全国30店に販売、売り上げは月1億

 昨年12月初旬、警視庁組織犯罪対策5課が家宅捜索をした東京都練馬区のごくありふれた住宅街にあるプレハブ小屋の外には、業務用の香料やハーブ片、手袋などが無造作に入れられたごみ袋が4、5袋転がっていた。いずれも、ここで薬物がずさんに製剤されていたことを示す痕跡だった。

 このプレハブ小屋は製薬会社「SSC」の製剤工場。覚醒剤によく似た効果がある麻薬成分「α-PVP」を含んだ粉末を水に溶かし、香料を混ぜた液状のドラッグや、液状のドラッグを植物片に吹き付けたハーブとして販売していた麻薬取締法違反の疑いがもたれていた。

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 SSCは国内で新たに違法薬物が麻薬指定されるたびに、中国の製薬業者に日本語で連絡を取って新しい薬物を注文。調合した上で、国内の脱法ドラッグ店に「違法薬物は含まれていない」と宣伝し、全国のおよそ30店に販売して月1億円を売り上げていたとみられる。

 工場内からは、たらいや飲料水のペットボトル、薬物の包装用の機械が押収されたものの、消毒設備も薬物の成分を鑑定する装置もなかった。警視庁関係者は「違法薬物を鑑定するどころか、雑菌も入り放題の環境。健康被害にもつながりかねない粗雑な薬物が全国ブランドになっていた」と指摘する。

化学式改変で「合法」 法改正で指定薬物急増

 違法薬物と脱法ドラッグの大きな違いは、麻薬指定されているかいないか。麻薬指定には、薬物の成分が人間にどんな作用をもたらすか、医学的な見地が必要なだけでなく、乱用されている実態があるかなど詳細な調査が不可欠なため、膨大な時間がかかる。

 麻薬取締法違反より刑罰の軽い薬事法違反を問うには指定薬物となっていることが必要で、こちらも化学式ごとに審議が必須。効果が同じでも、化学式のほんのわずかな部分を変えるだけで「合法」となるため、いたちごっこが続いていた。

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 しかし、薬事法が昨年、改正され、包括して似たような薬物を指定薬物にできるようになったことで風向きは変わった。指定までの期間が短縮され、指定薬物は急増。販売業者側でさえ、違法か脱法かの区別を正確に把握できない状態になってきているという。

 薬物問題を専門にする小森栄弁護士は「指定薬物や麻薬に指定されても、業者側は在庫処分で格安で売ることも多く、違法と脱法が混在して流通している」と指摘。警視庁も、脱法ドラッグ事件の担当を薬事法を管轄する生活環境課から麻薬を扱う組対5課に移す方向で検討している。

脱法ドラッグを「お香」で販売 効き目の強いものが増加

 「うちのは違法じゃないから大丈夫ですよ。初心者には、これがオススメですかね」

 墨田区のJR錦糸町駅近くにある脱法ドラッグ店では、50種ほど並んだ脱法ドラッグのパッケージの中に、SSCの製品も混じっていた。男性店長は「この間、摘発されたのは古いヤツ。これはもう大丈夫ですよ。違うシールが張ってある」と説明する,おRMT

 この店では脱法ドラッグの吸引で使うたばこ用の巻紙を売る店も案内する一方、脱法ドラッグはあくまで「お香」としての販売だとも強調する。脱法ドラッグを医薬品ではないお香として売れば、薬事法で取り締まれないのを熟知しているとみられる。

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 店長いわく、初心者にはほとんどの商品がすすめられないものだという。

 「最近は効き目の強いヤツが多いですから。まずはこの辺からどうですか、お香として…」

 常連とおぼしき男性客は、手慣れた様子で店長がすすめたものとは別のパッケージのものを購入し、「法律とか気になるなら買わない方がいいよ」と言い残して立ち去った。

「ほぼ覚醒剤」が氾濫 中毒者が使用も

 比較的効果が弱い脱法ドラッグはより依存性や毒性の強い違法薬物への「入り口」になるとされ、当初は覚醒剤よりも依存性が低い大麻系の成分が出回っているといわれてきた。だが、脱法ドラッグが社会問題化し始めた平成23年ごろから、業者間の競争が激化。覚醒剤に似た成分のものが氾濫してきているという。

 覚せい剤取締法違反罪で何度も有罪判決を受けた元俳優も昨年6月、麻薬指定されたばかりのα-PVPを所持したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕。「脱法だと思った」と否認したまま不起訴になったが、同7月には脱法ドラッグを吸引して救急搬送された。

 脱法ドラッグの大半は化学薬品の合成によって作られ、種類が膨大にある。警視庁幹部は「覚醒剤よりいいという依存者もいる。もはや、脱法ドラッグは覚醒剤中毒者が行き着く『出口』になっているのかもしれない」と警鐘を鳴らしている。