最後の更新から非常に時間が空いてしまいました。この間、本当にたくさんのことがあり、またプライベート以外でも大きな変化があったので疎遠になっていました。

 

まず、10月3日をもって釣りと距離を置くことにしました。

「手塚が釣りを辞めたらしい」と評判になっているとSNSで目にし、しっかりと自分の言葉で説明しなくてはいけないなと思い筆を執りました。

 

釣りと距離を置きたいと考えた理由は3つです。

 

1.釣った魚を責任を持って食べることができなくなった

2.魚を掛ける際の「必然性と偶然性」について論理が破綻した

3.一度きりの人生、もっと新しいことにチャレンジしたいと考えた

 

1.釣った魚を責任を持って食べることができなくなった

1については、今年一番のめり込んだのは最後のブログを記載したアブラボウズをテーマにしたものでした。アブラボウズの釣りには次の3つの醍醐味がありました。

 

1)水圧とラインの伸長率を計算した道具立てを熟考する醍醐味

2)激しい水圧による引き重りに耐えられるフィジカルを作る醍醐味

3)魚の居場所を見つけるために地形図を読み、船長と信頼関係を築く醍醐味

 

その甲斐あって、ブログではご報告していませんが、非常に素晴らしい釣果を上げることが出来ました。

 

今シーズンに釣り上げた10kg以上のアブラボウズは以下の9本です。

75kg、51kg、43kg、36kg、32kg、28kg、24kg、21kg、19kg

うち、SNSでご報告したのは5本です。その理由は後に詳しく書くつもりですが、勘の良い方ならきっとお分かりになると思います。この業界、色々あります。わたしのような若輩者が理論を語ったり、あるいは釣果を誇ったり(誇ってはないのですが)すると、やっかまれることもあります。

 

さておき、これが釣りをやめるのとどう関係があったのか、です。答えは簡単で、大きすぎて食べれない、そして、リリースが原則許されないという点にあります。

 

これは船長のお考えやお人柄もあろうかと思います。ですが、多くの場合、ゲームフィッシングを意識して深海釣りをしている船長は非常に少ないと感じています。ですので、見たこともない大きな魚が、水深1000メートルでルアーにバイトし浮上してきた興奮は、アングラーである私自身よりも大きいことがしばしばです。大歓声をあげ、ギャフで急所を一気に引っ掛けます。特にアブラボウズの場合は身が大変柔らかいため、30キロ近くなると頭蓋骨にしっかりギャフを打たなければ、船に引き上げる際に身切れしてしまいます。結果、魚は致命傷を追うことになり帰れない状態になります。

 

アブラボウズは大変美味しく貴重な魚のため、友人やお世話になった知人などにおすそ分けしてきましたが、流石にここまで量になると引き取り手を探すのに苦労することになります。「命の引き取り手」を探すなんて、本当に自分は一体何様なのかと思います。そもそも、その命の処理をするのも大変重労働ですし、お金もかかりますよね。深海の釣りが終わった直後に魚を解体し、梱包し、運送業者に持ち込んで発送する、という作業は途方もない重労働でもあります。

 

もちろん、我が家の2機の大型冷凍庫はアブラボウズがみっちり入っています。ですので、もうこれ以上、釣ってはいけないと感じました。

 

じゃ、もっと他の魚を釣ればいいじゃないか?!ということになろうかと思います。それは次の「2」に関係します。

 

2.魚を掛ける際の「必然性と偶然性」について論理が破綻した

オフショアジギングについて、あまり多くを述べるとトラブルのもとになるので

ここでは断片的にしかお話しませんが、行間を読み取って頂ければ幸いです。

 

オフショア釣り(水深200m以下の比較的浅場)での成功要因(CSF)とは何でしょうか?わたしなりの結論としては

 

1)場所

2)タイミング

3)棚

4)ファイト

 

上記の4点だとわたしは考えています。

 

1)場所=「運」と船長の勘と経験によるもの

2)タイミング=「運」と潮

3)棚=「運」と経験と技術と道具立て

4)ファイト=「運」と経験と技術と道具立て

 

全てが運に左右されるものです。もともとバスフィッシングからの転向組なので「釣りには往々にして運が重要」とは理解しています。が、このオフショアの釣り、特にスローに関して言うと「道具を作ってる側に回らない限り」は「釣らせてもらっている」以外にないと結論を出しました。

 

過去3年間で私の総出船回数は296日、うち247回がチャーターでした。その経験の中でたどり着いた答えが「運と船長と道具に釣らせてもらっている」で「自分にできることはせいぜい10%に満たない」ということでした。

 

もちろん、その「せいぜい10%」にはたくさんの知恵が盛り込まれており、その「せいぜい10%」が圧倒的な釣果を生み出すこともあります。ですが「今釣った魚をもう一度釣ってみろ」というリクエストにも「毎回竿頭になってみろ」というリクエストにも、永久に応えられないその惨めさ、虚しさが私の頭の中を覆いました。

 

このブログのタイトル、「戦略考」という名称の通り、私は理論を巡らせ、他を圧倒する結果を論理的に導き出したい、そう考える習性の人間です。その私にとってこの答えは、心から絶望するものでした。

 

3.一度きりの人生、もっと新しいことにチャレンジしたいと考えた

私にはいくつかの人生の指標とも言える座右の銘があるのですが、そのうちの一つに「プロフェッショナルとは再現性」という言葉があります。そして、私は常に何かのプロフェッショナルを目指していたいという衝動に突き動かされている人間だと自覚しています。

 

44歳の私にとって、時間はとても貴重です。毎日多くの時間をフィジカルトレーニングに充当させいつ、何を始めても通用するように努力をしています。

 

今なら、まだ新しい何かにチャレンジできる。

そう考え、10月3日北海道松前のクロマグロチャレンジを最後に竿を納めることにしました。奇跡的にも、人生最後の一投は36キロのクロマグロでした。

 

まだもう少しブログは続けるつもりです。なぜなら「せいぜい10%」と申し上げた部分、今の自分にはもう必要のない知識になりましたが、これからそれを必要とされる方々もきっといると思います。自分の記憶が曖昧にならないうちに、少しでも正確に皆さんに共有したいと考えています。

 

皆様からリクエストが多いのは以下の3点です。

 

1.アラ・ジギング

2.超深海ジギング

3.南海の超大物ジギング

 

少しずつ、時間を見つけて記録を残していきます。