3.The WarmUp Sequences

 トレーニングクラスや稽古の前には、自由にウォームアップをする時間が必要です。しかし、案外曖昧で形となっていないストレッチをしているだけで、内心はどうすればいいのか誰か教えてほしいなどと思っているのです。彼らは目的もなく体を曲げたり、瞑想しているように床に寝そべったりしています。要するに、準備が不充分になっているのです。そこで、ジンダーは、ウォームアップのガイダンスをするようになったのです。ウォームアップエクササイズは繰り返して行うものです。
  この「ウォームアップシークエンス」では、2つのセクションに分かれます。「フィジカル・ウォームアップ」と「クリエイティブ・ウォームアップ」です。前者は純粋に身体の基礎を、後者は身体の意識と、「身体-想像力」の統合から俳優の創造性を刺激します。こうした流れの中で、「日常の」自分から「日常を超えた」自分に昇華し、そして「創造的な自分」へと更に昇華するのです。
  かなりフィジカルな要素が強いですが、「フィジカルシアター」のために考案されたものではありません。もちろんどの舞台表現のスタイルにも適応できますが、本質は俳優の自由な創造性を習慣づけさせることが狙いで、またアウェアネス(意識)を通して正確なコントロールが備わり、創造的表現につながるようにすることを目的としています。




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花


2.Breaking the Ice

 今後ステップを踏んでトレーニングを体験していく上で、早い内に皆がうち解ける必要があります。気持ちよくスムーズに取り組んでいけるように、いくつかのエクササイズを紹介します。なにも最初の内にだけにやるエクササイズではありません。必要であれば、以後繰り返して行っても構いません。


〔EX2〕Circle of Names

◆ゆるやかな円を作ります。
◆一人がまず中央へ行き、それから左側にいた人から順にひとりひとりアイコンタクトをし、握手を求め、自分の名前をいう(ファーストネームのみ)。名前をいわれたら、その名前をオウム返しにしていう。
◆一周したら、また元の円に戻り、その右側の人が同様のことを行う。


NOTE:やるのは一度に一人のみで、他の人は私語をしたりしないように。挨拶の時に、身体全体を使って、大きくボディーランゲージをしましょう。


〔EX3〕Crazy Names Ⅰ
◆全員、スペース全体を自由に動くことができる。
◆動きながら誰かれ構わず即座にフルネームで自己紹介をする。相手も自分のフルネームで自己紹介をする。
◆皆は、素早く動きながら、「ヒステリック」といっていい感じで走ってスペースを動く。
◆お互いの自己紹介が完了したら、またスペースを動き、自己紹介を繰り返す。同じ相手に何度行っても構わない。
◆「フリーズ!」の合図で、完全にその瞬間にストップします。そして、「コンティニュー!」の合図で、また動き出します。


NOTE:考える時間がないくらい、ヒステリックに相手を探し、自己紹介を繰り返します。握手や、自分の名前をいっている途中でも「フリーズ!」がかかったら、瞬間にエネルギーを閉じこめストップし、「コンティニュー!」の瞬間、爆発的に開放します。新しいグループで、勢いをつけるのが狙いなので、「ヒステリック」に行います。オープンにさせるにはスピードが大事です。


〔EX4〕Crazy Names Ⅱ
◆ Crazy NamesⅠと同じく、ヒステリックに走ったり、握手やアイコンタクトなど基本ルールは同じ。違う点は、自己紹介をする際に全く新しい名前を告げるという点です。
◆ 毎回違う名前を使うこと。男の名前でも女の名前でも構わないし、ジバリッシュ的な変わった名前でもいいです。友達の名前でも、映画俳優や政治家の名前でもOKです。


NOTE:名前を前もって用意しておくのではなく、コンタクトの瞬間まで空白にさせておき、その楽しさを味わいましょう。


〔EX5〕Crazy Names Ⅲ-Class Reunion
◆まるで25年ぶりの同窓会のように、自己紹介をします。すなわち、懐かしさや驚きの感情をこめて、「○○だよ!」といいます。
◆しかし、年月が経っているので名前を思い出すまでに時間がかかります。過去から記憶を引っ張り出したように、相手も「●●だよ!」と自己紹介します。


NOTE:人によっては、背中をたたいたり、抱きしめたりしようとするが、それは避けるようにしましょう。相手が誰であろうかと探るエネルギーが大事であり、まだ初めて会った人たちがオープンにさせていく段階でのエクササイズです。


SUMMARY
上記四つの名前のゲームを行うことによって、俳優たちは連続した身体運動から紅潮し、興奮した状態になり、かなりリラックスした雰囲気になります。これが新しいグループであれば、お互いに名前を覚えるきっかけになっただけでなく、お互いの個性も見えてきたでしょう。見知らぬ人たちの集まりが、アンサンブルを築いていく出発点となったのです。


〔EX6〕Name Balls Ⅰ
◆ゆるやかな円を描いて立ちます。ボールはジャグリングボールが望ましいですが、小さなボールであれば大丈夫です。
◆最初はボール一つから始めます。これを円の中でパスしますが、そのとき、自分のファーストネームをコールします。ボールが名前を運ぶように相手にパスされます。徐々にボールを増やしていき、参加者のおよそ三分の一ぐらいまでになります。


NOTE: 名前はボールに乗っかり、声の響きは相手がキャッチするまで続きます。 思い切り投げようと思わないように。軽くでいいです。ボールを受けたときが、投げる動作の始まりだと思って、身体全体で受け、そのムーヴメントを投げる動作につなげましょう。


〔EX7〕Name Balls Ⅱ
◆基本のルールは上に同じです。今度は、投げる側の名前をいうのではなく、受ける側の名前をいいます。しっかりアイコンタクトをしてから投げるようにしましょう。名前が、相手を引きつける手段となってはいけません。




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花


1.Introduction まず初めに

 デヴィッド・ジンダーのメソッドは、俳優訓練に関するものですが、彼はこういうコンセプトを持っています。


システマティックな習得と技術の維持を通して、俳優という楽器と基本的な創造ツールを整備する


 この概念に基づき、ジンダーは本を書いているとき、三つのことがずっと中心に置かれていて、今でもそうだといっています。
①舞台という時間と空間のなかで展開されるクリエイティブ・モーメントへのあくなき魅力。
②身体・声・想像力が深く関わり、俳優から発せられるプレゼンスへの尽きない魅力。
マイケル・チェーホフの内容から受けるインスピレーションとガイダンス。
  ジンダーは、マイケル・チェーホフの影響を受けました。ワークショップで行っていること全て、ベースはマイケル・チェーホフと同じであるとまでいっています。彼は、チェーホフを簡潔に表すならば、「ジェスチャーはサイコロジー」「俳優は身体で想像する」だといいます。チェーホフは、演劇におけるサイコロジー(心理)は、ジェスチャーとムーヴメントであると考えます。徹底的なテキスト解釈でなくても、俳優は身体からその役を理解することが出来る。俳優の身体のムーヴメントと想像力の間には密接な関係があるのです。

「俳優は身体で想像する。内面のイメージに反応することなしに動いたり、演技したりすることはできない。イメージが大きく強くなるほど、声と身体は外面的に同調する」by マイケル・チェーホフ

デヴィッド・ジンダーのメソッドは、マイケル・チェーホフからスタートして、様々な素晴らしい俳優や演出家やトレーナーの影響があって、ここに形成されています。それられは広がり、今新しい俳優訓練として、我々に寄与するでしょう。




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星

5.Technicalities 専門的な注意

Critiques:エクササイズ一つ一つのあと、また一連の流れのエクササイズのあと、また区切り点でのディスカッションは重要。ディスカッションのないエクササイズは価値がありません。
Evaluation:観客は常に100%正しいと考え、みんなが評価を聞き、等しい敬意で接するべきです。役者は経験を積むにつれ、全てのことから学ぶ能力を持ちます。役者は、多くの評価を聞いて、その中から重要視するもの、自分のためになるものを選べばいいのです。これにはかなりの成熟度と誠実さが必要になります。
Diaries:人間の記憶は不確かなものなので、役者はみな、日記をつけたり、メモをとるようにしたほうがいいでしょう。そうしてトレーニングのことを書き留めておくのです。
The Work Space:できれば広めの木製のダンスフロアが適しています。コンクリートやタイルのフロアは、例えリノリウムを敷いていても、長い期間になると膝や足首にダメージが蓄積されます。天井はやはり高めのほうが望ましいです。そして最も重要なことですが、鏡は必要ありません。もし、稽古場に鏡があっても、カーテンで隠すことが出来ればいいでしょう。鏡は逆効果になるだけです。鏡が役者を歪め、取り憑かせ、最悪の観客兼批評家にさせるのです。


Physical preparedness and stamina:トレーニングの間、絶好のコンディションであることがいいのはいうまでもありません。トレーニング前に、食べ過ぎたり、水分を摂りすぎたりしないように気をつけましょう。また適宜休憩時間を作る必要があります。
Transformation:例え外で派手な格好をしていても、稽古場にはいるときは、それなりの稽古着に着替えることです。
Working clothes:動きやすい服装に着替えてください。動きの制約になるもの、例えばジーンズなどはいけません。軽めの服装が望ましいです。
Bare foot:裸足は、いい面と悪い面があります。厚底のスニーカーはやめましょう。
Accoutrements:時計、指輪、ピアスなどは外しておくべきです。



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4.Training into Writing トレーニングを書くということ


 トレーニングの本を書くというのは難しいことです。エクササイズのリストを書いていくだけでは、実際の立体的な様子までを伝えることは出来ません。また、新しいエクササイズや異なるバリエーションのエクササイズが常に生まれ、発達していきます。
  ストラクチャーのないエクササイズや、明確さに欠けるエクササイズというのは、無定形のものになる恐れがあります。ストラクチャーのないトレーニングの場合、全く自由であるという点は魅力的ですが、それなりの注意が必要になるでしょう。また、「素晴らしい体験」をもたらすこともできるでしょうが、職業的な技術・技能を磨くトレーニングと、サイコドラマなどとは区別しておかなければなりません。あらゆることを鑑みても、ストラクチャーが必要だという結論になります。そこで俳優訓練のロジックのなかで、ジンダーは、ストラクチャー的な要素や、エクササイズの関連性やプロセス、評価やサイドコーチングというものを盛り込んでいます。
  もう一つ、重要なことを考慮しておかなければいけません。トレーニングというのは、知識の経験が積み重なっていくものです。一つの段階からもう一つの段階に進むときにレイヤーがかぶさってゆきます。明確に輪郭付けられたストラクチャーは段階を踏んでゆくごとに記憶に残ります。
 しかしながらストラクチャーに盲目的に囚われてしまっては、教科書的になってしまいます。すべては、変化の素です。フレキシブルに扱っていきましょう。
 俳優訓練というのは、世界共通でシンクロしてる部分があります。俳優訓練に携わる国際的な会議にジンダーが参加したとき、そこにはスタニスラフスキーやメソッドなど色々なバリエーションの広がりやつながりがありました。しかし実に驚いたことに、自分がワークショップのために考案した内容と、全く同一のものを考案している別の人がいたのです。このことから、ジンダーはこういうことがあるのも当然だということと、同じ分野で、同じ概念で活動している人同士だと、同じ事を考えたりするものなんだということを学びました。




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