再読ついでに感想書き。
たつみや章 1998 『月神の統べる森で 』 講談社
東逸子さんの絵も世界観を広げてくれる。
アテルイとポイシュマの変化して行く間柄も好ましく。
アテルイが理想とされる人間像を持ち得ているかのように見えながらも、それはシクイルケと言う一点によって危うく均衡を保っていた完全さである事を描く一場面が流石にたつみや章だなと思う。
不完全さ未熟さを露わにして閉じるアテルイの世界を開く契機が、未成熟なポイシュマの感情の発露。
そのポイシュマの感情を引き摺り出したのは、ワカヒコの受けとめる心であると言う点であるのが上手い。
ポイシュマは自責から逃れる為にワカヒコを憎もうとしていた自分自身に気付き、そのなすりつけの憎悪だと分かった上でポイシュマの感情を引き受け死のうとするワカヒコの意志を知り、本当に自分が抱いていた感情は憎しみでは無く不甲斐なさ、そしてさらにその奥には悲しみがあったのだと言う事を掻き分け捜し出した場面はまさにポイシュマ自身を見つけ出し自分と他者との存在の中でこそ成長して行ける可能性を見せてくれている。
人との間でひとつ乗り越えたポイシュマが本当にしたかった事。
悲しみを悲しみとして受け止める事を認めた時に、それを見たアテルイまでもが自身の殻に閉じこもっていた事に気づき、ポイシュマに対して世界を開く。
お互いに補完し成長して行く数珠つなぎのような人々の関係性が、まさにこのあと数冊続いて行く縄文と弥生と言う、この物語の中では相入れないものとして描かれて行く人々の対立を融和させてゆく可能性を見せていると感じる。
縄文と弥生の端境期を描く新たな神話。
たつみや章、おすすめすぎる…!!!