僕はサッカーがそんなに好きではなかった。

実を言うと、アメリカワールドカップ予選の「ドーハの悲劇」の時は、サッカーのルールすらよく知らなかった。

見るスポーツと言えば野球だった。

Jリーグが始まって、TVで時々見かけるようになったが、そのおもしろさが理解できなかった。

得点シーンは少ないし、選手の個性は見えてこないし、何より、攻撃・守りがはっきりしないのが気に入らなかった。



そんな僕をサッカーの虜にしたのが、プレミアリーグだった。

96年にイギリスに留学した僕は、英語に耳を慣らすため、必死でTVにかじりついていた。

だが、イギリスのバラェティ番組は、日本のそれと違って動きが少なく、トークだけで笑いをとるものが多い。

ニュース番組などは単語のレベルが高すぎて、さっぱりわからなかった。

必然、僕が見るのはスポーツ番組ということになる。

イギリスは、多くのスポーツ発祥の地。

ゴルフ・テニス・クリケット・競馬・etc…そして、フットボール。

サッカーに詳しい人に言わせると、イングランドのサッカーは単純で、世界のトップレベルに比べれば落ちるということらしいのだが、、僕にはその単純明快さが心地よかった。

「ロングボール1本、ヘッドでズドン」

これが、僕が愛してやまない(サッカー玄人に言わせると低レベルな)イングランドサッカーである。


一生懸命、サッカー番組をチェックし、僕のサッカーの知識レベルはどんどんUPしていった。

何より、ヒアリングレベルの低い僕を助けてくれたのが、フリットという選手だった。

ルート・フリット。オランダのスーパースターであり、長い間、セリエAのACミランで活躍した。

僕がイギリスにいたときは、ロンドンのチェルシーというチームのキャプテンで、BBC(イギリスの国営テレビ)で、スポーツキャスターもしていた。

なぜ彼が頼りになったかというと、彼はネイティブではないので英語の発音がとてもきれいだったのだ。

すごく丁寧に、ゆっくりとしゃべってくれ、ありがたかった。


さらにラッキーなことに、僕の下宿は様々な国から英語を学びに来る生徒のために、イタリアとスペインの国営放送がみれた。

おかげで、プレミアリーグ・セリエA・スペインリーグと、ヨーロッパを代表するプロリーグの試合が楽しめたのである。「Juventus」が読めなかった僕が、3ヶ月ほどでヨーロッパのほとんどの有名な選手とチームがわかるようにまでなっていた。



そして、とんでもない幸運が僕に訪れた。

<つづく>