作品後記『かもめ』 演出・小西優司 | 合同公演『かもめ』特設Blog

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演劇集団アクト青山が総力を挙げてお贈りする『かもめ』3チーム
(劇団員・準劇/本科生合同チーム×2)による2017年6月の公演をいち早く、よりよく知っていただくためのBlog。

作品後記 『かもめ』

 

演劇集団アクト青山主宰の小西です。

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先週、合同公演『かもめ』が無事に終わりました。

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チラシを置かせてくださった千歳烏山のお店の皆さま、せんがわのお店の皆さま、本当にありがとうございました。

また、ご来場くださったお客様も、日頃より応援してくださっている皆様にも重ねてお礼申し上げます。今回公演の「成功」はひとえに皆様のお力添えの賜物です。

この場をお借りして、心より感謝申し上げます。

 

えーと。

作品後記ですよね。

書くのやだなぁ()

正直ね、今回はちょっと書くのが難しいです。

でもね、楽しみにしている人がいて下さるので頑張ってみます。

 

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「プランX100点のかもめだとしたら、そもそも今回はプランA70点のかもめ」

 

なにそれ?

って思うでしょ。

そうなんです。

そもそも、チェーーホフ劇は三人の登場人物による人間関係の崩壊喜劇が基本的な路線なんですね。四代戯曲はどれも。『かもめ』で言ったら、ニーナ×トレープレフ×トリゴーリンのお話なんです。でも、現状の僕の演出する力ではこの「三人」の人間関係が鮮明に描けないんです。

だから僕が考えて来たのは二人の人間関係によって形成されるコメディ、って部分です。

 

今回は特にニーナ×トリゴーリンに特化して作りました。ただですね、この組み合わせだけだとやっぱり退屈しちゃうんです、チェーホフって。そこで、マーシャ×メドベヂェンコとポリーナ×ドールンを思い切った形で「外から」関わらせようと思って下手客席通路と上手側特設舞台とに分けて一幕を創っていきました。まーこれが形になった時点で、僕の中ではおおよその青写真は出来ていたし、今回はそんなに失敗しないかなって思いましたね。

あとは二人ずつの組み合わせを三組作るのは、三人の組み合わせを二組作るのと「構造上」同じに近いので、自分の演出的な短所もこれでカバーできたかなと思うわけです。

ただですね、こうなるとトレープレフとアルカーヂナは演出の構造上「脇役」になるわけです。仕方ない。全部をとったら作品は成功しない。だから配役は冒険せず、地力の高い役者さんのお願いしました。その甲斐あってか(いや、結果だけ見たらそれ以上に)バランスの良い出来上がりになったんだと思います。

その点に特化していえば、本科生たちはここの部分で作品の完成度が劇団員と違ってしまったかなと。もちろん彼らには彼らにしかできない素晴らしい何かはあったんだけど、渋谷さんのアルカーヂナは本当に今回のエポックメイキングな出来事、として認知したい出来だった。

 

さて、次にね「テーマってありますか?」ってよく聞かれるんです。作品を創ってると。

 

テーマはお客様がお感じになったそれがテーマですよ、っていつもは思うんだけど。今回は違いました。テーマはあります。言ってないけど()

 

テーマはですね『夢~旅の終わり~』なんです。誰も感じなかったでしょ?なんでこんなテーマかっていうと、僕にとって夢と旅は「現実」の裏返しの単語なんです。実際に描きたいのは現実なんだけど、現実っていうのは三者間の感情摩擦じゃなきゃ出ないから、じゃあ、逆に夢と旅をテーマにしちゃおうと思ったわけです。だから、上手の特設舞台の横には切符とか本とか鞄とか、旅行に関係するものがたくさん飾ってあったし、手紙とかお酒とか旅を彩るものが置いてあった。

 

これらは小屋に入ってから思い付きで飾ったものばかりで、稽古中は誰一人目にしてなかったから、これが完成した時が今回の公演で一番興奮した。まー、飾ってあったものの中には「地球の歩き方ロシア」とかチェーホフ関連の書籍もかなり含まれてたから多分に悪ふざけだったんだけど。

 

あとはそれに混ざって、前回の『野鴨』で死んだヘドヴィの衣裳も飾った。これは「悪い予感」のシンボルとして、配置することをしたかったのと、『野鴨』を見て下さったお客様がちょっと得するというか前回との関連付けをしてくださるといいなって思ったので。やっぱり、続けてみて下さるお客様になんでもいいから「お得感」って発生させられないかいつも考えるんだけど、今回はああいう形でやってみました。

 

後は…。

なんだろうなぁ。

起承転結じゃなくて、序破急で創ってますよ、とか。

いつものやつですよね。

今回は特に一幕の劇中劇までを「序」、劇中劇から四幕のロトーまでが「破」、ロトーからエンディングまでが「急」で、構造上「破」が長いけどここは本当に何にも起きない。チェーホフっぽい。面白いのは「序」と「急」だけ(あ、面白いっていうのはドラマとしての在り方の問題です)で、しかも「序」はすごい稽古した。すごい稽古した。どうしても成さねば成らぬくらいの勢いで、口を酸っぱくして耳にタコとイカが出来るくらい全員を叱咤激励して。なのに「急」はすごい適当にやった。

いや、

語弊があるな。ちゃんと稽古して、でも「マスト」とは思わずに流れていくものに任せていた。ていうかね、これができるようになってきたのがもしかしたら一番の収穫かも。四幕まで来たんだから、お客様の想像力と情報の蓄積を信じてあんまり頑張ってやらないって気持ちが出てきた。多分『ヘッダ・ガーブレル』くらいから気づいてきたと思う。それが実を結んできて、僕らがリラックスして劇をクローズしていくことで、お客様の中で「もう少し観たい」が発生するようになってきたかなって感じる。

 

二時間半は長い、実際に物理的に長い。でも、そうじゃない。そうじゃないを出来るだけ発生させて、楽しんでほしい。僕らも一分でも長く、台本が許す限り長く舞台にいたいし、お客様にもそう願ってほしい。そのためにテキスト(台本)と死力を尽くして(文字通り)向き合ってるし、役者には基礎が重要だと説いてるし、演出に力を入れている。

 

 

今回の『かもめ』は僕史上、最高傑作です。間違いない。

 

 

全米も泣かないし、日本中が笑ったりはしないけど、僕にとっては節目の年に、本質的な意味ですごい仕事をしたなって自分を褒めたいです。

チェーホフの『かもめ』であんなに客席が笑ったり、カーテンコールが出来レースでもなくダブルだなんて奇跡です、奇跡。

すごく嬉しかった。こっちが感動しました()

 

 

 

次も頑張ります。

約束します。

次も、頑張ります。

 

 

楽しみにしてほしいです。

これから、を。