割に大きな余震がきたおとといの夜。
私は地震の怖さを忘れていたんだなぁと自分で自分に驚いた。
緊急地震速報が携帯からなった後、本当に間を置くことなく足元が揺れた。
一か月前、夜中に何度となく鳴り響いた震速報のバイブレーションのような音は、
忘れたころに聞いても体がびくつくものらしい。
約一分ほどの大きな揺れだった。
最初は横に大きく揺れた。
一瞬おさまるかのようなかすかな静寂があって、
部屋が揺さぶられるように激しくおおきな揺れが続いた。
棚から物が勢いよく落ちた。
電気と水が瞬時に消えて、外も一瞬にして暗くなった。
また、静寂だった。
あの時と同じで、真っ暗だった。
わりに平気な気がしたけれど、手が小刻みに震えていた。
怖いというのとも違う、変なざわめきが起こった。
今のは絶対に津波くる、と思って、まっさきに心配したのは実家だったけれど
ワンセグでニュースを見て、津波の高さが高くないことに胸をなでおろした。
世間が復興へ道をたどっているさなか、
本当に突然地震は起きる。
その日はぐだぐだネットを見ながらお風呂にお湯を張っていて、
こんなことならさっさとお風呂に入っていればよかったと思った。
暗闇の中、懐中電灯を置いて、
浴槽の四分の一ぐらいまでたまったお湯で体と髪を洗った。
停電しているから、髪はタオルでごしごしふいて
そのまま乾いたタオルを頭に巻いて眠った。
案外普通に眠気が訪れた。
朝、カーテンを開け放った窓から差し込む薄暗い光で目を覚まし、
いつものようにテレビの主電源を入れたけれど、何も反応がなかった。
停電が続いているらしい。
ワンセグでニュースを見ると、
テレビではお気楽にスポーツニュースをやっていて腹が立った。
こっちが知りたい停電の情報も何もなくて、
こっちの状況をテレビで流しているだけだった。
見ていても無駄だったので、携帯を閉じた。
パジャマのままボーっとしていた。
停電なのに会社があるわけないよね、
だって、電子カードをかざさないと開かない社員入口だし、
何よりパソコンがつかないんだもの、仕事にならない。
そう思ってパジャマ姿のまま8時ぐらいまでベットで胡坐をかいていたら
先輩から営業するってメールが届いて、しぶしぶ会社に行った。
会社は真っ暗で、ほかの階には社員はいない。
当たり前だけどエレベータは使えない。
はぁはぁ言いながらうちの階まで階段を上った。
オフィスでは、すでに各部署のお偉いさんやほかの社員が出社していて
非常電源で仕事をするっていって、あわただしく動いていた。
あ~普通に仕事できないのに仕事すんだ、
とがっかりして、朝ご飯を食べていない私はイライラしながら席に着いた。
暗いオフィスで、普通に仕事をする。
いつもと違う環境でいつもと同じ仕事をする。
これが意外にイライラするんだなと思いながら仕事をした。
電話に出ると、こっちの状況お構いなしの相手にむかついた。
でもまぁ、みんな帰りたいと思いながら仕事してるんだろうなと思いつつ、
みんなおんなじように大変なんだしと思って我慢した。
何してんだろうなと思いながら、仕事した。
やる気は、ゼロに振り切っていた。
電気が復旧したのは午後のことだ。
停電にも地震にも慣れたはずなのに、前よりもいらだちが大きかった。
福島の原発で働いている人のことを思うと、とても心が重くなる。
人々のために、毎日過酷な環境の中、力を尽くしてくれている人たちがいる。
この揺れも、向こうの人たちにとっては私たちが感じる以上に恐怖だったと思う。
なのに、私は出勤命令が出ただけでムカついて、かなり心が狭い。
だめだな。
私は、ダメだ。