週末は一泊二日の社員旅行だった。
二日目のお昼は、何度か社員旅行で来たことのある
場所で、バーベキューを食べることになっていた。
そこにはワインカーブやお土産屋も併設されており、
いろいろと楽しめるところである。
ここで社員Kは、ワインの味見をし、気に入った銘柄の
ボトルをレジに持って行って会計を済ませ、さて、
昼食の会場へと向かおうとしていた。
ここでKは別の社員がまだ売店を見ている様子に
気づいた。
すでに昼食の開始時間は過ぎている。
そろそろ会場に向かわないと、とその社員に
声をかけようとしたとき、ワインカーヴから新人Sが
出てきた。
Sは会社へのお土産にするワインを選んでいたのだ。
Sが出てくると、売店を見ていた社員が戻ってきて、
KとSは共にバーベキューの会場に向かった。
Kはこの時初めて気づいた。
新人のSは当然初めての社員旅行であり、
この場所には来たことがない。
つまり、もし一人になってしまったら、
バーベキュー会場にたどり着くまで、もたついて
しまうだろう。
(会場は売店から少々離れている。)
だから売店を見ていた社員は、わざとそこに残り、
新人Sが出てくるのを待っていたのである。
この社員とは、実は社長である。
Kは、社長が新人に見せた気遣いを理解し、
内心恥じ入ったそうである。
ビジネスで上に行く人は、他人への気遣いができる人
であることが多い。しかし、そうはいっても新人相手に
そのような気遣いを見せる社長というのも、
あまりいないのではないか?
Sの先輩にあたるKが社長の振る舞いを見て、
恥じ入ったのも無理もないことであろう。
以上