薄暗い部屋の中、

 

彼女は古びた手紙を

じっと見つめていた。

 

 

手紙の紙は黄ばんでおり、

文字は少しにじんでいる。

 

 

かつては大切にしていたものだが、

 

今ではその内容を

開くことすら恐ろしかった。

 

 

彼女は震える手で封を開け、

ゆっくりとその文字を読み始めた。

 

 

「これが最後の……」

彼女は言葉を詰まらせた。

 

 

書かれている言葉の一つひとつが、

彼女の胸に突き刺さるようだった。

 

 

彼が去ってから、

もう何年も経っているはずなのに、

 

 

その記憶はまるで

昨日のことのように鮮明だ。

 

 

彼の言葉は温かく、

優しさに満ちていた――

 

それが余計に彼女を苦しめた。

 

 

彼は何も悪くなかった。

すべてを壊したのは彼女自身だ。

 

 

愛を手放し、

彼を遠ざけたのは自分であり、

 

その代償を今も払い続けている。

 

 

手紙の中にある約束や夢は、

もう二度と叶うことはない。

 

 

だが、彼女はその事実を

受け入れることができずにいた。

 

 

「どうして……あの時に戻れたら」

何度もそう願ったが、時間は戻らない。

 

 

彼女はそのことを理解していた。

 

それでも、心の奥底では彼がいつか

戻ってきてくれるかもしれないという、

 

かすかな希望が残っていた。

 

 

手紙を握りしめたまま、

彼女は深い息を吐いた。

 

 

涙が頬を伝い、紙に落ちる。

文字がまた少し滲んでいくのがわかる。

 

 

彼女はもう一度手紙をじっくりと見つめ、

そして静かに折りたたんだ。

 

 

「これでいい……さよなら」

彼女は手紙を引き出しにしまい、

 

深くため息をついた。

 

 

彼の記憶を手放すことはできない。

それでも、前に進むために、

 

この手紙はもう開けないと決めたのだ。

 

 

部屋の外で、かすかに風が吹き抜けた。

 

それはまるで、彼女の決意を祝福

するかのように優しく感じられた。